2012年9月、米国特許商標局(PTO)において既存の米国特許の有効性を争う手続として、当事者系レ ビュー(IPR)が創設された。(連邦地方裁判所での訴訟と比較して)コストが比較的低額であるこ と、申立人の主張が認められる可能性が高いことから、IPRは、米国において特許を無効化するメカニ ズムとして、高い評価を得てきた。

IPRには、トライアル前の段階とトライアル段階の、2段階の手続がある。トライアル前の段階は、当 該特許は無効であると申立人が信じる理由と証拠につき記載した申立書の提出に始まる。その後3か月 以内に、特許権者は、無効である理由として主張された内容に反論する内容の回答書を提出す る。PTOの特許商標抵触部(PTAB)から3人の判断権者の合議体が、その後3か月以内に、当該申立て をトライアル段階に進めるか否かにつき決定する。合議体は、特許クレームのうち少なくともひとつ が無効である「合理的な可能性」があると判断した場合、当該申立てをトライアル段階に進める。こ の立証責任は、連邦地方裁判所での訴訟における「明白かつ確信を持つに足りる」証拠による立証と 比較して、その程度は低いものである。

IPRがトライアル段階に進むと、判断権者の合議体は、トライアルに進んでから12か月以内に最終判断 を書面で出さなければならない。よって、IPR手続は、合計で18か月を超えるものではない。トライア ルの期間中、当事者は、専門家証人の供述録取(デポジション)の実施等による制限的な証拠開示(ディスカバリー)を実施することができ、また、主張書面を提出する機会を有する。合議体の面前 での口頭弁論の機会もあるのが通常であるが、合議体の面前での証人尋問が行われることは稀であ る。

2016年5月までに、3000件のIPR手続が終結した。このうち半数程度において、トライアルが実施され た。そのうち1000件程度において、書面による最終判断が出された。これらのうち70%において、争わ れた特許クレーム全部が無効と判断され、14%において、少なくともひとつの特許クレームが無効と判 断された。このように、IPR手続では特許クレームが無効と判断される割合が高いことから、多くのコ メンテーターがPTABを「特許暗殺集団」と考えているのも驚くべきことではない。

換言すれば、IPRの手続は、特許の無効性を主張する者に友好的なものといえる。特許が無効と判断さ れる可能性が比較的高いだけではなく、申立て後18か月以内という早期に判断を得ることができる。 これは、競合他社の特許に抵触する可能性のある製品の市場導入を考えている会社にとって、特に有 用である。特許の有効性についての判断が早期に出されることにより、伝統的な訴訟と比較して低い コストで判断が得られ、重要な点として、製品開発に多大なリソースを費やす前に確実性が得られる ことになる。IPR申立ては、非実施団体やその他の者からの特許侵害訴訟に直面している既存の製品を

有する会社にとっても有用である。これらの会社にとって、IPRは、伝統的な連邦地方裁判所での訴訟 における、高額となり得る特許無効の主張に替わるものとなり得る。

統計から、IPR手続で特許権者の主張が認められる可能性が高いのは、トライアル前の段階であること が判明している。よって、特許を無効であると主張する者にとっても特許権者にとっても、この時点 で、当該特許の技術分野について専門的な知識を有し、かつ、IPRに関する規則や手続に精通した弁護 士とともに検討することが重要である。