2016年2月、連邦外国投資委員会(CFIUS)は、2014年度の年次報告書を議会に提出した(CFIUSレ ポート)。CFIUSは、米国の安全についての懸念があるような外国から米国への直接投資を検討・調 査する規制機関である。以下において、CFIUS規制、届出手続、CFIUSレポートの概要について説明す る。

I. CFIUS体制及び自主的通知の概要

CFIUSは、米国財務長官が長官を務める連邦機関であり、閣僚の重要なメンバーも参加してい る。CFIUSは、連邦制定法、大統領命令、政府ガイダンスで法制化されている。これらの規則によ り、大統領は、米国の安全を脅かす「対象取引」を停止又は中止する権限を有する。「対象取引」 は、米国内での州際通商に従事する人をコントロールする権限を有する外国人による合併や買収を意 味する。

国家安全への脅威となるものについてはCFIUSによって広く解釈されており、そのため、米国事業へ の投資や買収を検討している外国企業からすると、不確実なものとなっている。しかし、米国への投 資を検討している外国企業は、自主的通知を提出してCFIUSによる内密調査を求めることができ、こ れにより、将来的に取引が問題となるリスクを軽減することができる。自主的通知には、取引の当事 者、価値、対象会社の説明等、取引に関する基本的な情報を記載しなければならない。また、自社事 業の説明、重要な人物のリスト、対象事業に関する計画、対象会社と米国政府の間の契約に関する情 報も記載しなければならない。

自主的通知が提出されると、CFIUSは、30日以内に当該取引につき検討して以下3つのうちいずれかの 決定を出さなければならない。1つ目は、当該取引は対象取引に該当しない、との決定である。2つ目 は、当該取引は対象取引に該当するものの、国家安全を脅かすものではないか、又は、国家安全への 脅威を最小化するための条件を記載した契約である「最小化契約」により脅威は最小化される、との 決定である。3つ目は、取引に関する調査開始(開始から45日以内に終了しなければならない)の決定 である。そのような調査が開始された場合でも、調査終了時には、国家安全への脅威はないか、又 は、そのリスクは最小化され得る、と判断されることもある。CFIUSがデッドロック状態に陥るか又 は当該取引を禁止する必要があると判断した場合には、大統領に連絡され、大統領において、当該取 引の禁止・承認・一定の条件下での承認との決定をすることになる。

各取引は事案ごとに個別に判断されるが、関連規制や過去のCFIUSの決定から、厳格な基準が適用さ れる場合についてのガイダンスを得ることができる。制定法では、取引を検討するにあたって大統領 が考慮することのできる数多くの要素が定められている。例えば、対象となる当該米国企業が国家防 衛上の要件を満たしているか否か、特定の国家に対する軍需関連品の販売に影響を与える可能性があ るか否か、重要なインフラに影響を与える可能性があるか否か、対象取引により外国政府が米国企業 を支配することになるか否か、等である。また、米国と不安定な関係を有する国家における企業との 取引や、通信・エネルギー・輸送・情報技術等の重要な業界における取引である場合には、厳格に判 断される可能性が高い。

II. 2014年年次報告の概要

CFIUSレポートによると、2014年度(発表されている年次報告として最新版のもの)は、CFIUSが米国 への外国投資を検討した数が増加した。すなわち、2013年には97件の取引しか検討されていない が、2014年には147件が検討されている。製造業界において増加率が最も著しく、自主的通知の数 は47%増加した。取引の検討から調査に移行した自主的通知の割合は、2013年が50%であったのに対 し、2014年には35%であった。CFIUSは、2014年には9件において最小化契約を利用した。

日本企業に関する検討された取引数は、2013年には18件であったのに対し、2014年には10件と減少し た。日本企業の業界ごとの区分を見ると、2012年から2014年にかけて、製造業界では18件、ファイナ ンス・情報・サービス業界では10件、鉱業・公共事業・建設業界では5件、卸売・小売・輸送業界で は4件の自主的通知がなされた。

注目すべき点として、CFIUSレポートによると、「米国が主要なプレイヤーとなっている重要な技術 の調査・開発・製造に従事する米国企業を買収しようとする外国政府又は外国企業」が存在する可能 性がある、と米国の諜報コミュニティーは考えているようである。CFIUSは、重要な技術に関する外 国企業と米国企業の間の合併又は買収として、108件を特定している。情報技術・電子機器・半導体・ エネルギーの分野が、そのような取引の最大数を占めている。ヨーロッパ及び東アジアの企業がその ような「重要な技術」の取引のうち80件に関与しており、他方、日本企業は5件にのみ関与してい る。CFIUSがこのような分野を強調していることから、連邦政府は今後このような重要な技術に関す る取引に注目していく可能性があるといえる。

日本は米国との関係が不安定な国家ではないが、米国に投資する日本企業は、事案によって はCFIUSに対する自主的通知をすべきか否か検討すべきである。軍需事業・重要なインフラ・センシ ティブな技術に従事する米国企業に投資したり買収したりする日本企業は特に注意すべきであ り、CFIUSへの自主的通知の準備及び届出手続に関して、当該分野に経験を有する代理人弁護士に相 談することをお勧めする。