ベトナムでは、インフラ投資の活性化のために、PPP(Public-Private Partnership, 民間連携事業)に関する法制度の改善を目指しています。計画投資省(MPI)の作成した、最新のPPPに関する政令案及び民間業者の選別に関する入札法の施行細則を定める政令(入札法施行令、Investor Selection Decree)案は、従前の規制と比べて、より透明性が高まっています。多くの国際的アドバイザー、国際開発金融機関、援助国、商工会の意見が、今回の改正案について、ポジティブ的な影響を及ぼしたとみられます。政令案は既に政府が検討中であり、速やかに法律が成立すると期待されています。また、MPIは、PPP事業の管理を行う現地当局の職員に対して講義を実施し、新法について適切な運用がなされるための手当ても行っています。

新政令のハイライト

  • 新PPP方式の採用(従来のBOTの他、BOO方式など)
  • 民間業者提案型の事業に対する経済的インセンティブ
  • 準拠法及び紛争解決方法の選択性
  • 政府保証などのインセンティブ
  • PPP事業の進行状況の公開

なぜPPP?

ベトナムでは、急成長する経済や人口の増大を後追いして、インフラが整備される状況となっています。エネルギー、ごみ、水処理、交通機関について、抜本的な改革が待たれているにもかかわらず、政府の予算は十分ではありません。一方で、諸外国では、多くの官民連携での成功事例があり、ベトナムでもPPPによるインフラの整備が期待されています。パートナーシップとは、政府は、「利用者」(公共施設の顧客)を持っていて、土地や税務上のメリットなどの利益を提供することといえます。その代わりに民間は、技術、資本、実績に基づく効率性を提供することになります。

法整備の状況

ベトナムでは、PPPに関して、1997年国内民間業者向けの政令62号が設けられ、1998年海外民間業者向けの政令77号が設けられました。2009年には、BOT、BT、BTO方式に関する政令108号が設けられました。2010年には、決定71号により、PPPに関するパイロット・プロジェクトが始まりました。2011年には、政令108号が政令24号によって改正されました。しかし、これらの改正によっても、PPP事業への海外投資を呼び込むことはできませんでした。PPP事業に対する現地当局の理解・支援がなかったことが理由のひとつとして挙げられます。ルールが明確ではなく、当局の担当者の裁量が広汎であったという難点もありました。

新ルール

新しいPPPに関する政令案(2014年9月時点)は、前述の改正内容をひとつの政令にまとめ、さらに、ルールをより明確にし、民間業者へのインセンティブを供与しています。入札法施行令案(2014年10月時点)は、公共調達法の指針となる内容ですが、PPP事業に参加する民間業者へのインセンティブについても、細やかに規定されています。

PPP事業の方式

従前から認められていた、BOT (build-operate-transfer)、 BTO (build-transfer-operate) 、BT (build-transfer)の方式に加えて、BOO (build-own-operate)、 BTL (build-transfer-lease)、BLT (build-lease-transfer) 、O&M (operate and manage)の方式を新PPP政令案では準備しています。

民間業者提案型のPPP事業に対する経済的インセンティブ

入札法施行令案は、政府のプロジェクトリストに掲載されていない、民間業者提案型のPPP事業についてインセンティブを提供する内容となっています。たとえば、民間業者提案型のPPP事業も競争入札を行うことになりますが、提案者は、他の入札者よりも5%のアドバンテージ(事業のサービスの価格や政府資本の提供など)があります。計画投資省(MPI)の担当者は、これらのアドバンテージは、小規模の事業(グループC事業)の他、大規模事業のフィージビリティスタディにも適用があると述べています。

準拠法選択、紛争解決手段

MPIの担当者は、ベトナム法が原則的には準拠法となりますが、準拠法選択について、交渉の余地があることも認めています。PPP政令案では、プロジェクトの契約、すなわち外国人・外国法人を当事者とする契約や政府保証条項について、外国法を準拠法にし、外国での仲裁を選択することも可能です。案では、外国仲裁判断の承認・執行をベトナムの裁判所が拒否してきた理由(例、「商業紛争」性を欠くため)に対する文言も含まれています。(もちろん、国に対する外国仲裁判断をベトナムで執行させることは困難ではないかと思われます。)

情報の公開・更新

公開義務によって、PPP事業が一層透明性が高いものとなりました。PPP事業の提案が承認されれば、7日以内に、政府の調達ウェブサイトで公開されなければなりません(ただし、センシティブ情報及び秘密情報は除く)。一般的な事業の情報に加えて、このウェブサイトでは、プロジェクトの進行に応じて情報がアップデートされる義務が生じ、プロジェクトに関する情報がより透明になる見込みです。

今後

以上の情報は、新PPP政令によって期待される多くの改善点のうち、一部に過ぎません。準拠法・国外仲裁が選択可能なことは、過去の規制と比べると革新的といえます。もし、すべての改善点が立法化されれば、PPP事業への関心を再起させる内容といえます。実務的には、政令が現地当局レベルでどのように運用されるかが非常に重要です。MPIは、PPP事業の管理を行う現地当局の職員に対して講義を実施し、将来のPPP事業の透明性向上を目指しています。