2016 年 4 月、長く待ち望まれていた、再生可能エネルギー発電設備を含むインフラ施設に投資する上場ファ ンド、いわゆるインフラファンドの第 1 号案件の上場手続が始まりました。 

本レターでは、インフラファンド上場の前段階において検討しておくべきこととなる各種手続・論点のう ち、インフラファンドの組成(設立手続)の概要に加え、関連許認可・賃料設定・税務要件に係る各種留意 点を、第 1 号案件であるタカラレーベン・インフラ投資法人の実例を踏まえながら解説いたします5, 6。

I. インフラファンドの組成・許認可・賃料・税務要件の概要

  1.  インフラファンドの組成(設立手続)の概要 
    1. 資産運用会社

インフラファンドの形態としては、おそらく、J-REIT の場合と同様に、ガバナンス構造などの面で 投資家から好まれ易い投資法人を用いるのが一般的になるだろうと考えられます。 

また、その場合、インフラファンド本体の組成に加えて、投資信託及び投資法人に関する法律 (以下「投信法」といいます。)に従い、インフラファンドの保有資産の運用に係る業務を行う 資産運用会社の存在も不可欠となります。

この資産運用会社は、金融商品取引法第 28 条第 4 項に規定する投資運用業に係る登録を受けた者 でなければならず、そのためには、一定の資産要件(最低資本金及び最低純資産額各 5000 万 円)・ガバナンス体制(取締役会や監査役等の設置、内規の整備)・人的構成(十分な知識及び 経験を有する人員の確保等)等を備えている必要があります。なお、インフラファンドの保有資 産の内容や投資対象によっては、資産運用会社において宅地建物取引業法(以下「宅建業法」と いいます。)上の許認可等を取得する必要もあります7。 

この点、第 1 号案件であるタカラレーベン・インフラ投資法人の資産運用会社(タカラアセット マネジメント株式会社)においても、これらの要件との関係で、取締役会、監査役、投資運用 部、投資運用委員会、コンプライアンス部、コンプライアンス・オフィサー、コンプライアンス 委員会等の各種機関や部門が設置されており、また、リスク管理規程等の策定や遵守体制の整備 が行われています。 

  1. インフラファンド 

インフラファンドの設立に際しては、上記資産運用会社が設立企画人となって投資法人の設立を 行い(最低純資産額 5000 万円以上、設立時発行投資口の払込金額 1 億円以上、執行役員・監査役 員・会計監査人の選任等)、投信法上の登録(標準処理期間 1 か月程度)を受けることとなりま す。投資法人の設立後は、資産運用会社に資産運用に係る業務の委託を行うことになります。

この点、第 1 号案件であるタカラレーベン・インフラ投資法人においても、資産運用会社である タカラアセットマネジメント株式会社が設立企画人となっています。 

  1. 上場要件 

インフラファンドを上場させる場合には、上記に加えて以下のような上場審査の各種要件を充足 する必要があります。

(a) 上場審査における主要な形式要件 

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(b) 上場審査における主要な実質要件

  1.  情報開示を適正に行うことができる状況にあること(オペレーターに関する情報の適時開 示や資産運用会社に関する情報の十分な開示等)
  2.  資産の運用等を健全に行うことができる状況にあること(オペレーターの選定基本方針や リスク管理方針の適切な策定等)
  3.  金銭の分配又は収益の分配が上場後継続して行われる見込みがあること
  4.  公益又は投資者保護の観点から上場が不適当と認められるものでないこと 

 

  1. 許認可に関連する留意点 

インフラファンドの組成に際して投資法人及び資産運用会社において必要となる許認可等は上述の通 りですが、加えて、本スキームへの移行8に際しては、インフラファンドの投資対象資産等を用いる再 エネ発電事業との関係で、各種プロジェクト関連許認可への影響についても配慮が必要となります。 

すなわち、プロジェクト SPC においては、対象プロジェクトに関してその開発・実施に必要となる各 種許認可(農地転用許可、林地開発許可等)を取得・維持することが必要ですが、本スキーム(対象 インフラ資産等の譲渡及びリースバック)への移行のタイミングによっては、当該移行手続に関連し て既存のプロジェクト関連許認可に悪影響を及ぼすこととならないよう配慮し、各プロジェクトが取 得・保有等しているそれぞれの許認可に応じて移行の方法及びタイミングを選択することが重要とな り得ます。 

例えば、プロジェクトの事業用地に農地等が含まれており、プロジェクトへの利用に農地法上の農地転用許可(5 条許可)の取得が必要な場合、5 条許可の前提となった事業(再エネ発電所の設置事 業)が完了する前に当該事業用地について本スキームへの移行に係る権利移転を行うためには、5 条 許可の再申請または一定の承継手続が必要となり得ます9。他方で、上記 5 条許可の前提事業完了後に 当該権利移転を行う場合には、完了報告の提出・受理をもって農地法上の手続は終了するため、同法 との関係で特段の手続は必要となりません。 

このように、プロジェクト関連許認可との関係では、対象インフラ資産等の譲渡の時期を調整するこ とによって、法令上の手続的制約を回避し、あるいは実務上必要となる可能性がある監督・関係官庁 や自治体との調整・折衝等を最小限にすることが可能となり得ます10。 

この点、第 1 号案件であるタカラレーベン・インフラ投資法人においては、その取得予定対象資産を 全て稼働済(完工後)のプロジェクトに係る設備等に限っているため、プロジェクト関連許認可への 影響は最小限に抑えられているといえます。 

  1. 賃料の設定方法・内容(固定賃料 vs 変動賃料)

本スキームへの移行後においては、インフラファンドが当初オーナーからリースバックに係るインフ ラ資産等の賃料を受領することが想定されていますが、当該賃料の設定方法・内容については、適用 法令上特段の制約はなく、①固定賃料、②変動賃料(売電収入に連動)、③固定賃料+変動賃料の 各態様が考えられます。変動賃料制はプロジェクト SPC にとって固定賃料制よりも親和性があると考 えられる一方で、投資法人における事業性や投資家の期待する収益の安定性等の観点からの要請もあ り、実際の賃料設定に際しては、J-REIT でも採用されている③の方法が有力な選択肢になるものと考 えられます。

この点、第 1 号案件であるタカラレーベン・インフラ投資法人においては、上記③の方法が採用され ており、原則として、一定額の最低保証賃料額に、賃借物件(太陽光発電設備)に係る売電収入に連 動した実績連動賃料額を加えた金額が賃料に設定されています。また、かかる最低保証賃料額と実績 連動賃料額との関係についても、賃料の大部分が実際の売電収入の変動に連動しない最低保証賃料 (発電予測値を勘案して算定された月毎の想定売電金額の 100%を想定)となるように設定すること が予定されており、実績連動賃料は月毎の想定売電金額が最低保証賃料額の 110%相当額よりも大き い場合に当該超過額の 50%を限度として生じるものとされている点が参考になります。 

  1. 税務要件(導管性) 

本スキームへの移行後においてインフラファンドが税務上のメリット(分配金の損金算入)を享受す るためには、概要以下の要件(導管性)を継続的に充足していく必要がある点に留意が必要です。 

原則的要件: 「政令で定める資産」(政令でその範囲が定められる一定の特定資産をいい、「再生 可能エネルギー発電設備」や同設備を主な営業財産とする匿名組合出資持分はその中 に含まれません。以下同じです。)が総資産の 50%超11 

例外的要件: 以下の要件を充足する場合、「再生可能エネルギー発電設備」を当初の取得の日から 当初の賃貸開始日以後 20 年を経過する日までに終了する事業年度まで、「政令で定め る資産」に含めることが可能12 

  1. 投資法人が平成 29 年 3 月 31 日までに「再生可能エネルギー発電設備」を取得す ること(投資法人が締結している匿名組合契約の相手方たる営業者が同日までに 「再生可能エネルギー発電設備」を取得すること、及び投資法人が同日までに 「再生可能エネルギー発電設備」を営業財産とする匿名組合契約の出資持分を取得することを含みます。) 
  2.   設立の際に投資口を公募(発行価額 1 億円以上)又は投資口の上場 
  3.  投資法人の規約上、「再生可能エネルギー発電設備」の運用方法が賃貸のみ

この点、第 1 号案件であるタカラレーベン・インフラ投資法人は、20 年の上記特例期限経過時点で導 管性要件を引き続き充足できるようにするために投資対象資産の種類や比率を変更することは特に予 定していないとのことです。

なお、かかる導管性の要件に関しては、「政令で定める資産」に含めることができる「再生可能エネ ルギー発電設備」は平成 29 年 3 月 31 日までに取得したものに限られるか(それ以降に追加取得した 「再生可能エネルギー発電設備」を「政令で定める資産」に含めることは可能か)という点も論点と なり得ますが、適用法令の文言や実際に想定される投資・運用の形態に照らせば、当該期限よりも後 に追加取得した再エネ設備も「政令で定める資産」に含まれると考えられます13。 

この点に関連し、第 1 号案件であるタカラレーベン・インフラ投資法人は、今後もスポンサーから付 与された優先的売買交渉権を活用することによって資産の拡大を図っていく方針とのことです。