Summary

要約

オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)はカルテル行為に対する初めての刑事告発を行いました。

ACCCによる審査が行われた結果、連邦検察庁(CDPP)による刑事訴追に至り、日本の世界的海運会社、日本郵船株式会社(NYK)が刑事上のカルテル行為の有罪を認めました。

これは、オーストラリアでほぼ7年前に導入されたカルテルに対する刑事罰規定が初めて使われた事例です。

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カルテル行為:刑事責任と民事責任

NYKは今回、日本とオーストラリアの間の航路を含む海運航路に関して価格操作を行ったという罪を認めたもので、これによって今後、判決の言い渡し手続が行われ、その後、オーストラリア連邦裁判所によって同社に罰則が科されることになります。

豪競争・消費者法の下では、カルテル行為は刑事責任と民事責任の両方が問われる可能性があります。同法の民事罰規定は、意図せずにもしくは無意識にカルテルの一員となった場合にも適用されますが、刑事罰は被告がカルテル行為について知っていた、もしくは意図的にカルテル行為に関与した場合に科されます。刑事責任の立証には、裁判所は合理的疑いの余地なく被告が有罪であると判断する必要があります。これに対し、原則的に民事責任の立証に必要なのは、蓋然性の均衡による判断にとどまります。

NYKに対する罰則がどれほど厳しいものになるかは、今後数カ月間はわかりませんが、法人がオーストラリアのカルテル刑事罰規定の下でカルテル行為の有罪判決を受けた場合には、各違法行為につき最高1000万ドルまたはカルテル行為で得た利益額の3倍のいずれか高い方の金額が罰金として科される可能性があり、後者の利益額の査定が困難な場合には年商の10%が使われます。

同法はカルテル行為に参加した個人に最高10年の禁固刑を科すこともできますが、今回の場合はNYKの幹部ではなく、法人だけが罪に問われており、少なくとも本件の訴追内容については禁固刑が科されることはありません。

他国における訴追例

昨日の有罪答弁の対象となった行為については、NYKは他国でも同様の刑事訴追を受けています。昨年12月に同社は同じカルテルに関してアメリカで5940万米ドルの罰金を受け、今年3月には米司法省が同社幹部の一人に対し、同カルテルで果たした役割を理由に15カ月の禁固刑を科しています。同社はまた日本の公正取引委員会からも130億円の罰金を受けました。

今回の事例では、他国ですでに行われていた規制当局や検察当局による刑事手続にACCCとCDPPが助けられたことは明白です。ACCCはNYKの海運カルテルに参加した他の企業に対する審査を継続すると述べており、今後さらにカルテルに関する刑事訴追が行われる可能性もあります。アメリカでは他に三社がNYK海運カルテルに参加したことを認めています。

 

コメント

カルテルに関するオーストラリアの刑事法規制は、これまで非常に複雑で不明確であるとして厳しく批判されてきましたが、2015年の競争政策レビュー(ハーパー・レビュー)は、その執行制度の簡素化を勧告しています。

今回の初めての刑事告発で勝訴に至ったことで、今後、豪規制当局が同様の刑事手続に向けて動く意思を示すかどうか、あるいは今回の事例は、同じ企業に対する海外当局の勝訴によって比較的容易に実現できた例外に過ぎないのか、これからの動向が興味深いところです。