ドッド・フランク改革及び消費者保護法は、2008年の 金融危機を契機として、非常に重要な金融改革の方法 を提供するものである。特に、企業の不正行為につい て報告した内部通報者に対し、経済的なインセンティ ブ及び雇用保護を与える点が挙げられる。同法施行か ら5年を向かえ、これらの条項がどのように実際に適 用され裁判所がどのようにこれらを解釈してきたかに つき、以下で検討する。

報奨条項

報奨条項は、SECが「証券法に基づき」提起した訴訟 において100万ドルを超える回収に成功した場合に、 その一部を内部通報者に提供するものである。15 U.S.C. § 78u-6(a)(1)   内部通報者が報奨を受け取るため には、同人が合法的に取得したオリジナルの情報 をSECに自主的に提供した、ということが必要であ る。§ 78u6(b)(1); 17 C.F.R. 240.21F-4(b)(4)(iv)

SECは、内部通報者が受領する報奨額の決定にあた り、以下の点を検討する。

  • 提供された情報の重要性
  • 提供された情報が役立った程度
  • 証券法違反について判断するにあたってのSECの関 心
  • その他法又は規則で規定する追加要素
  • § 78u-6(c)(1)(B)

2015年4月28日時点において、SECは、17人の内部通報 者に対し合計で5000万ドル以上を支払い、最高額 は3000万ドルであった。また、SECの内部通報者部門 は、2014年度末までに、1万件以上の内部通報情報を 得た。

同法を実施するSECの規則は、内部通報者が社内コン プライアンス部のルートを取ることを妨げるものでは ない。社内に問題を提起した内部通報者は、SECに対 して120日以内に報告書を提出する限り、社内で通報 した日付をSECに対して報告した日付の代替とするこ とができる。17 C.F.R. 240.21F‑4(b)(7) これにより、そ の間に他の人がSECに通報した場合でも、内部通報者 の権利は保全される。また、内部通報者条項は、会社 が、内部通報者の報告書が先に提出されることにより 会社が自主報告による便益を受けることができなくな るのを避けために、自ら調査を行い自主報告を行うイ ンセンティブを与えるものである。

内部通報者保護

同法は、内部通報者が政府に情報を提供したり政府の 調査を手伝ったりしたことを理由に、雇用者が、内部 通報者を解雇、降格、嫌がらせ、脅迫、同人の個人情 報の開示、差別等を行うことを禁止してい る。§ 78u‑6(h)(1)(A) この保護を受けるためには、内部 通報者の報告書は証券法違反に関連するものでなけれ ばならない。しかし、内部請求によりこの保護が得ら れるか否かについては、裁判所の意見が分かれてお り、明確ではない。

コンプライアンス担当者や社内弁護士への適用

コンプライアンス担当者や社内弁護士も、内部通報者 として報奨・保護を受けることができる。しかし、コ ンプライアンス職務や、秘匿特権で保護される情報が 必要となる可能性があることから、報奨額は限定され る可能性がある。例えば、社内弁護士は、弁護士と依 頼人の間の秘匿特権で保護されるコミュニケーション や法的代理に関連して情報を取得した場合、報告 がSECの倫理規則上許されるものではない限り、報奨 を得ることはできない。17 C.F.R. 240.21F‑4(b)(4)(i)

社内弁護士が報復規定違反の主張をする際、裁判所 は、当該主張の立証に必要な秘匿特権で保護される情 報の開示による被害を最小化するよう努める。コンプ ライアンス担当者が報復規定違反の主張をする際に は、当該内部通報が通常のコンプライアンス職務を超 えるものであることを立証することが必要となる。

外国人への適用

外国人も、同法の法的要件を満たす限り、同法によ り内部通報者としての報奨を受けることができる。し かし、同法の報復保護条項は、外国では適用されてい ない。See, e.g. Liu Meng-Lin v. Siemens AG, 763 F.3d 175 (2d Cir. 2014); Asadi v. G.E. Energy (USA), LLC, ___ F.Supp.2d ___, 2012 WL 2522599 (S.D. Tex. June 28, 2012); Ulrich v. Moody's Corp., No. 13-CV-00008 VSB, 2014 WL 4977562 (S.D.N.Y. Sept. 30, 2014) 域外適用が何かを決定する画一 的な基準はないが、裁判所は、関連する事実が発生し た時点で従業員が所在した場所、違法行為が行われた 場所、報復行為が発生した場所を検討する。原告が関 連行為発生時に米国外で雇用されていた場合には、通 報された行為が米国法に違反するものであった場合、 原告が米国民である場合、雇用者が米国に主拠点を有 し解雇通知が米国から発せられた場合であっても、報 復規定は適用されない。すなわち、従業員が米国外で 勤務・所在し、通報された行為が米国外で発生したも のである場合には、内部通報者の報告規定に基づく主 張は認められない可能性が高い。

会社の義務

また、同法は、証券法違反と考えられる行為について の内部通報者によるSECへの報告を会社が妨げること を禁止している。17 C.F.R. 240.21F-17(a) 今年初 め、SECは、従業員が内部調査について第三者と協議 することを禁止する内容の秘密保持契約における文言 に基づき会社を提訴することを発表した。同社は、秘 密保持契約の文言を修正することに同意した。これ は、同法の規制に従った秘密保持契約を作成すること についてのガイダンスを提供するものである。

結論

ドッドフランク法についてのこれら又はその他の問題 点に関して、今後も引き続き裁判所の解釈が出される ことが予想される。また、内部通報者に対する報奨額 は今後ますます大きくなるものと予想される。同法の 適用を受ける会社は、内部通報をより深刻に受け止 め、内部通報者を適切に取り扱うことが求められる。