欧州委員会のデジタル単一市場戦略、電子商取引セクター 実態調査、およびオンラインプラットフォームに関する意見公募

  •  はじめに
  • DSM 戦略
  • 電子商取引における競争についての実態調査の開始
  • オンラインプラットフォームに関する EU の意見公募
  • コメント
  • 今後の動き
  • 問合せ先

はじめに

欧州委員会は、TMT(テクノロジー・メディア・テレコミュニケーション)やクリエイティブ セクターなどで事業を運営する企業のみならず、物理的な商品(電子機器、衣料品 およびその他の消費財)をオンライン販売する企業にとっても極めて重要性の高い 様々な取組みに着手しはじめています。

  1. 2015 年 5 月 6 日、欧州委員会は、今年に入ってデジタル経済についての計画 を発表(2015 年 4 月 2 日発行の欧州版 e-bulletin(英文のみ)参照)したのに 続き、デジタル単一市場(DSM)戦略を正式に採択しました。
  2. 欧州委員会は今般、電子商取引セクターについて競争に係る実態調査を実施 することを正式に発表しました。
  3. 欧州委員会は、オンラインプラットフォームに関する意見公募を行う予定であることを発表しました。

欧州委員会は、現在のところ該当企業に宛てて質問状を送付する作業を進めている模様です。

本稿では、以下について解説します。

  • デジタル空間における欧州委員会の近時における活動の主な内容について、その総括
  • 同委員会の野心的な戦略の裏にある政策上の目的について、その客観的な考察

DSM 戦略-3 つの柱に基づく 16 の措置

DSM 戦略には、2016 年末までに DSM プロジェクトチームによって実施されるべき 16 の 措置一式が含まれています。これらの措置は 3 つの柱に基づいています。

  1. 消費者および企業のための、欧州全域におけるデジタル製品およびサービスへの アクセスの向上
  2. デジタルネットワークおよび革新的なサービスが開花するための適切な条件設定と 競争上の公平性の確保
  3. デジタル経済の成長可能性の最大化

更に詳しい内容については、欧州委員会のプレスリリースファクトシート、および Q&A で ご覧いただけます。

電子商取引における競争についての実態調査の開始

DSM 戦略が目標とする措置を補足するものとして、欧州委員会は電子商取引セクターに おける実態調査を開始しました。これは、欧州の電子商取引市場に影響を及ぼす可能性 のある競争上の懸念を特定することを目的としています。

この実態調査は、電子商取引が最も普及している商品やサービス(電子機器、衣料品、 靴、デジタルコンテンツなど)のクロスボーダー取引における潜在的障壁に特に焦点を 置くものです。同実態調査においては、広告料で運営されている放送だけでなく、無料放送や公共放送もその対象とされるかもしれま せん。同実態調査の過程において、欧州委員会が競争ルール違反のおそれがある事案を確認した場合、標準的な競争ルール(TFEU 第 101 条または 102 条)に基づく審査が開始される可能性があります。

欧州委員会は、現在のところ製造業者、卸売業者、および電子商取引に従事する小売業者を含めた様々な利害関係者に宛てた情報 提供要求書の送付を開始しており、これは今後数週間にわたって続けられるでしょう。2016 年半ばに意見公募を行うための暫定報告書 が公表された後、2017 年第 1 四半期に最終報告書が公表されるものと予想されます。

更に詳しい内容については、欧州委員会のファクトシートおよびセクター実態調査のウェブサイトでご確認いただけます。

オンラインプラットフォームに関する EU の意見公募

欧州委員会はまた、以下についての包括的な評価を 2015 年末前に開始するとの公約を発表しました。

  • プラットフォームの役割(共有型経済(sharing economy)における役割を含む)
  • 各種オンライン仲介業者の役割

これは、(i)透明性(例:(有料リンクおよび/または広告を伴う)検索結果におけるもの)、(ii)プラットフォームにより収集された情報の 使用、(iii)プラットフォームとサプライヤーとの関係、(iv)個人および企業がプラットフォーム間を行き来する能力に課される制限、および、 (v)インターネット上の違法コンテンツへの最善の対処法、といった懸案が対象となります。

コメント

欧州委員会が重要視する、成長のための駆動力としての汎 EU デジタル経済

ジャン=クロード・ユンカー欧州委員会委員長は、EU の将来にとって DSM は重要であると考えています。とりわけ、欧州委員会は、EU がデジタル化の恩恵を最大化する取組みにおいて他の市場(特に米国)に遅れをとっていることを懸念しています。

欧州委員会は、デジタル経済が十分に発展し、かつ活用されたならば、この隔たりを埋める可能性が開けるものであり、投資とイノベー ションの機会を提供することによって成長と雇用を創出するものであるとの考え方を示しています。このことは、ひいては、市場の拡大ととも に、より多くの商品やサービスをより低価格で消費者が入手できるようになることにつながるはずです。また一方で、より効率よいデータの 使用によって、健康、食の安全、資源効率性を含め、多くの生活面が改善されるはずであるという議論がなされています。

また、本戦略では、EU 全域において高速ブロードバンドを展開する必要性が特に重要視されています。これは、企業と消費者を受益者と する全ての潜在的恩恵の拠所である先端デジタルサービスと様々な新テクノロジー(例:(i)いわゆるモノのインターネット(Internet of Things)、(ii)ビッグデータ分析、および(iii)クラウドコンピューティングのインフラ)を実現するためです。

今後の動き

欧州委員会が DSM を重要な優先事項と見ていることは明らかです。欧州委員会は、自らが用いることができるあらゆる手段を講じて、 様々な措置を並行して採っています。これらの措置には、(i)諮問および意見公募、(ii)競争に係る自らの権限に基づくセクター実態調査、 (iii)具体的な競争審査、および(iv)法案提出の可能性が含まれます。

この点は、ユンカー委員長の指揮下にある欧州委員会の体制が、前任者らと比べてより連携の強化されたものであることを反映しています (DSM は、アンドルス・アンシプ副委員長の監督の下、複数の欧州委員会部門を中心に進められています)。

デジタルセクターにおいて(直接または間接的に)活動中であるか、または活動を目指している企業は、特に電子商取引に係る実態調査 において欧州委員会の正式な質問状に返答するよう求められることが予想されることから、今後欧州委員会と連携していく必要があるで しょう。加えて、同調査、プラットフォームに関する意見公募、そしてさらには、より広範な DSM 戦略が企業にもたらし得る結果を踏まえると、 (具体的な競争法上の措置および/または新規立法につながる可能性があり、)企業にとっては、(i)準備をしておくこと、(ii)自社の慣行 が EU の競争ルールを遵守していることを確保すること、および(iii)欧州委員会の様々な取組みが自社の実務に及ぼし得る影響に ついて予測することが、これまでになく重要なことだと言えるでしょう。