最近、華為が米中両国でサムスンに対して起こした特許訴訟が注目されている。華為は、同公司の知的財産権を侵害する行為について賠償をするようその訴訟でサムスンに要求しているが、これらの知的財産権には、通信技術に関する価値の高い特許とサムスンの携帯電話に使用されているソフトウェアが含まれている。

世界知的所有権機関(WIPO)の公表した2015年PCT国際特許出願件数の統計によれば、華為技術有限公司は、前年より456件多い3,898件の特許を出願しており、2年連続で世界の企業のトップとなっている。2015年末までで華為が全世界で取得した特許は累計で50,377件であるが、これらの特許には、スマートフォンに対して高い価値のあるLTE通信、スマートフォンのオペレーティングシステム、ユーザーインターフェースなどの特許が含まれている。

当初は訴えられていたのが現在では積極的に訴訟を起こすようになり、被告から原告へ立場が転換したことからも、中国の通信分野が急成長している情勢が反映されている。特に特許分野において、中国の携帯電話メーカーではこの数年、特許保護意識が益々高まっており、技術開発にも一層力が入れられている。華為公司とサムスン社の4G分野における特許力は一体どのようなものだろうか? 2016年5月28日までに4G分野では、クアルコム社、中興通訊公司、エリクソン社、華為公司、サムスン社などをはじめとする全世界の出願人によって約7万件の特許出願がされている。これらのうち、華為公司からは合計で1600件余りの特許出願がされていて、484件が既に権利化されているが、その技術内容は、無線通信ネットワーク、デジタル情報の伝送及び伝送システムなどに関係している。一方、サムスン社からは合計で1400件余りの特許出願がされていて、245件が既に権利化されている。スマートフォンの機能については、華為公司からは合計で6700件余りの特許出願がされていて、3400件余りが既に権利化されている一方、サムスン社からは合計で1万5000件余りの特許出願がされていて、8200件余りが既に権利化されている。

華為公司の立場の転換は、高額の研究開発投資と持続的な技術イノベーションを背景とするものである。あるデータによれば、2015年に華為公司は、新技術、新製品及び無線通信標準の研究開発のため、売上高の約15%にもあたる約92億米ドルを投資している。また、2015年末までで、華為公司が全世界で取得した特許の件数は累計で50,377件にも達している。

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図1から分かるように、サムスン社の特許出願件数は華為公司の6倍で、規模からいえば、確かに華為公司はサムスン社に及ばない。しかし、華為公司が設立されたのはサムスン社よりも数十年遅れていて、特許の蓄積には時間のかかるものである上、サムスン社の方が華為公司より業務範囲が広い。特許の種別に関しては、サムスン社と華為公司のいずれも発明が最も多く、通信及び伝送の分野でいずれも発明特許をメインとしている。特許の登録率から見ると、サムスン社の55%の登録率は、華為公司の40%よりも明らかに高いということができる。

サムスン社の特許出願は、主に半導体デバイスの分野に分布しているが、同社は、通信業務以外にオーディオ・ビデオ製品(カメラ、撮影機、ホームシアターなど)、IT関連製品(ハードディスク装置、ノートパソコンなど)、家電製品なども幅広く手がけている。華為公司の特許出願は、主にデジタル情報の伝送と無線通信の分野に分布しているが、このことは、通信ソリューションのサプライヤーとしての同公司の立ち位置にも合致しているといえよう。

調査データによれば、華為公司が特許出願をしている地域は主に中国、米国及び欧州である一方、サムスン社が出願をしている主な地域は韓国、米国及び中国で、日本及び欧州における特許出願件数は他の地域よりも少なくなっている。このような地域的な分布から、やはり殆どの企業では、海外市場で特許を取得しようとするときには、まず自国で特許出願をしてから海外で特許を取得しようとしていることがよく理解できるであろう

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双方の業務が重なる通信分野では、調査データ(図2)に示すように、華為公司とサムスン社の特許出願件数は拮抗しているが、登録率から見ると、サムスン社が華為公司を上回っている。

特許訴訟の領域で、米国は触れざるを得ないほど重要な戦場であるが、双方が米国で通信分野において特許を取得している状況はどのようなものだろうか? 調査データによれば、サムスン社の米国における特許保有件数は華為公司の2倍以上で、この差は主に10年前から生まれているが、華為公司の米国における特許取得も2007年から現在までで徐々に活発化していて、その増加率も安定し続けていることが明らかになっている。

一企業がその地域での特許取得を重視している程度を表すものとして、特許出願件数からそれを垣間見ることができる以外に、その地域における特許の年金納付率ももう一つの側面からその企業の重視度を裏付けるものとなっている。データによれば、この20年近くで、華為公司とサムスン社の通信分野における特許の年金未納率は、それぞれおよそ0.02%、0.25%となっているが、このことから、サムスン社は米国で大量の特許出願をしているが、放棄しているものも多い一方で、華為公司が米国で提出した特許出願では放棄されている数も少ないことが分かる。

「今回の訴訟は、4G標準の特許とスマートフォンの機能の関連特許に関するものです。これらの特許は、スマートデバイス製品のユーザー体験と相互接続に極めて重要なものであり、サムスン社の製品に対しても高い価値があります。」華為公司法務部の責任者は、このように話している。華為公司が米国で提出した訴状によると、華為公司は、LTE技術や2G・3G技術に関する米国特許権11件がサムスン社により侵害されたと主張している。

中国情報通信研究院知的財産センターの李文宇主任は、次のように話している。「これら11件の米国特許は、殆どが2011年から2014年までの間に出願されており、相次いで権利化されている。特許の技術内容には、LTE技術のコアネットワーク、物理層及び高位レイヤシグナリングが含まれていて、大部分の特許は、LTEの基礎ヴァージョン3GPP Rel-8に関連するものである。注意すべきこととして、これら11件の特許には、世界の100以上の国・地域にも及ぶ300件以上ものパテントファミリーがある。」

この事件に関係する特許は、スマートデバイス製品に対して一体どのような価値を有するのだろうか? 華為公司が米国で提出した訴状から見ると、関係特許の殆どが4G標準の必須特許であるとのことだが、これらの特許は、通信装置が相互接続するための基礎となるものである。これらの特許技術がなければ、携帯電話が通信機能を備えることもないので、この事件に関係する特許は、あらゆる携帯電話製品に対して高い価値を持っている。

既に相当に競争が激しくなったスマートフォン市場であるが、競争は日増しに白熱化しており、特許訴訟は、既にスマートフォンメーカーが市場競争に参入するための重要な手段の一つとなっている。そのため、スマートデバイス製品に対して高い価値を有する関係特許は、華為公司が競合他社に対して攻勢に出るための有力な「武器」となっている。