Summary

オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)と日本の公正取引委員会は、2015年4月29日、両者間の協力に関する取決めを締結しました。

この取決めにより両競争当局は、審査における相互補助や情報交換をより自由に行うことができるようになります。

このeBulletinでは、この取決めが日豪間で業務を行う両国企業にとって何を意味するのかについて、そして世界各地でますます増えている、各国競争規制当局の調査・執行における協力活動について述べたいと思います。

協力に関する取決め

今回の取決めは日豪両競争当局間における「建設的な協力」のための枠組みを構築する目的で締結されました。

本取決めには次のことが定められています。

  • 通報: 各競争当局は、先方の競争当局に対し、先方競争当局の重要な利益に影響を及ぼす可能性があると考えられる自己の執行活動について通報する。
     
  • 情報交換: 各競争当局はその審査過程で入手した情報の共有について十分な検討を行う。両競争当局は先方の執行活動に関連性のある情報や、先方における執行活動が必要となる理由になりえる情報をもっている場合には、これをお互いにできるだけ提供し合う。
     
  • 執行活動の調整: 各競争当局はお互いの執行活動を支援し、執行活動の調整を検討する。これには企業や個人からの情報や証拠の入手が含まれる。

両競争当局間の協力は「執行活動」に及び、これには一方の国の競争法の適用において同国競争当局が実施している審査や手続きが含まれます。ただし、執行活動には次のものは含まれません。

  • 業務活動のレビューや通常申請 (合併・買収許可やその他の通告)
  • 全般的な経済性や特定セクターの全般的な状況を調べる目的のリサーチ、調査、アンケート

当局間で交換された情報の守秘義務は守られ、この情報は法律の効果的執行の目的だけに使用されます。この情報の他者への開示は、開示する当局が書面で許可した場合など、限られた場合にのみ許されます。

この取決めはオーストラリアと日本が2014年7月8日に締結した経済連携協定を受けて結ばれたものです。

世界各国との協力

今回の取決めは、ACCCが反競争的行為を阻止するための審査活動を国外に広げ、他国当局の支援に努力している姿勢を示すものと見られます。産業のグローバル化が進み、法域の境界線が不明瞭になる中、諸国の競争当局間の協力は今後ますます増える見込みです。

日本企業を重視

今回の取決め締結に至る前にACCCは一連の日系企業に対する訴訟を行い、注目を集めていました。

昨年12月、矢崎総業とオーストラリアン・アロー社に対するACCCの訴訟の審理が連邦裁判所で行われました。同局の主張は、両社がトヨタ自動車およびその豪関連会社に対するワイヤーハーネス販売において、カルテル行為、市場分割、価格操作を行ったというもので、連邦裁判所は判決を留保しています。同訴訟は日本、アメリカ、カナダ、ヨーロッパをはじめとする各国規制当局による同様の審査を受けたものです。

2013年10月、株式会社ジェイテクトの完全子会社であるKoyo Australia社は、カルテル行為を行ったとして200万豪ドルの罰金を科せられました。同社はボールベアリングとローラーベアリングの価格を引き上げるために、二社の日系エンジニアリング企業と共謀したと判断されました。連邦裁判所の判決によると、「価格操作計画」は在豪日本人幹部が夕食をともにしながら合意したものです。

重視すべき点は、同様の審査が日本公正取引委員会とその他各国当局によって同時に行われていたことです。日本公正取引委員会は自動車用ベアリングの不正入札に関連して複数企業に合計340億円の罰金を課し、複数個人に対して刑事訴訟を行いました。

2013年4月、日本のケーブル販売会社である株式会社ビスキャスは不正入札と価格操作を理由に、連邦裁判所の判決によって135万豪ドルの罰金支払い命令を受けました。裁判所は同社が日本とヨーロッパにおける他の電気ケーブル販売会社と反競争的な取決めを行ったという判決を出しました。

企業への影響

ACCCと日本公正取引委員会との協力が増す中、日豪両国の企業と個人はいずれの国の競争法にも違反しないように細心の注意を払う必要があります。

反競争的行為に対するオーストラリアの規制は他国に比べてより厳しく、より積極的に執行されていると考えられています。したがいまして、オーストラリアで業務活動を行う日本および各国の企業はオーストラリアの法規制に基づく義務を確実に把握し、社内コンプライアンス対策を実施しておく必要があります。

このたびの両国間の取決めやその他各国との合意によってACCCの審査力が拡大していることで、外国企業でも不正行為を行った場合には、ACCCによる起訴を必ずしも避けることができなくなります。

ACCCの法域が国外の業務活動に及ぶ範囲については現在、不確かな部分もありますが、オーストラリアは各国と協力して審査を進めることができるようになっているため、反競争的行為が少なくとも一国の規制当局によって起訴される可能性は高まるでしょう。