米国の民事訴訟における出来事

連邦控訴裁判所第7巡回区は、外国取引反トラスト改善法に基づき、液晶ディスプレイに関 する主張を再度棄却した

連邦控訴裁判所第7巡回区は、2014年11月26日、Motorolaが液晶パネル製造業者に対 して行った価格協定に関する主張のいくつかについて、再度、外国取引反トラスト改善法 (the Foreign Trade Antitrust Improvements Act)によって禁じられると判示した。手続 法上の問題があったため、裁判所は、本論点に関する2014年3月27日付け判決 (カルテル・ウォッチ第2巻第2号を参照)を取り消し、追加的な書面の提出及び議論を認 めた。それにもかかわらず、裁判体の見解は、ほとんど変わらなかった。影響力の大きい ポスナー判事の意見部分において、裁判所は、最初の購入がMotorolaの子会社によって 米国外で行われているため、Motorolaが主張する液晶ディスプレイの購入のうち99%が、 米国反トラスト法の適用外であると判示した。裁判所は、米国Motorolaがその後、同社 の子会社から、主張されているような価格協定がなされた液晶パネルを含む製品を購入 した場合であっても、米国Motorolaが同社の子会社による最初の購入条件について指 示していたと主張した場合であっても、外国取引反トラスト改善法によってこれらの主張 は禁じられると判示した。裁判所は、主張された行為が、外国取引反トラスト改善法が規 定する要件のうち、米国における取引に「直接的、実質的、かつ合理的に予見可能な」効 果を及ぼすことという要件を満たすかもしれないものの、このような米国に対する効果 は、問題となっているMotorolaの主張を「発生させ」ないと判示した。むしろ裁判所は、 礼譲主義に基づき、Motorolaの米国外の子会社が取引を行っており、かつ同子会社が 最初の購入を行った米国外の管轄において発生した主張は、その管轄の法律の対象に なるべきであると判示した。特に、日本、韓国、台湾及びベルギーを含む複数の外国政 府機関は、米国反トラスト法の域外適用を制限することを支持する法廷助言書を提出し た。

光学ドライブ訴訟においてクラス・アクションが承認されなかった

カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所のリチャード・シーボーグ判事は、2014年 10月3日、光学ドライブに関する反トラスト訴訟(in In re Optical Disk Drive Antitrust Litigation)における直接購入者のクラス及び間接購入者のクラスの両方について、クラ ス・アクションを承認しなかった。裁判所は、Comcast  v.  Behrend事件における最高裁 の判示に基づいて「厳格な分析」を行い、原告側の専門家が、一般的な立証という方法 に基づいてクラス全体に広がりを持つ反トラスト法上の損害が発生していることを示して いないと判示した。原告側の専門家は、全体として過剰請求がなされた金額を計算した が、裁判所は、同専門家が用いた計量経済学のモデルが、すべての又はほぼすべての購 入者が実際に過剰請求された又は損害を被ったことを示そう としておらず、そのことを前提としていることから、同モデルは 不十分であると判示した。上述の内容とは別に、裁判所は、 指名された原告が、提示された価格表に基づく価格でのみ製 品を購入した小規模の購入者である一方、提案されたクラス には購入価格について交渉をした大規模で有力な購入者が含 まれていることから、直接購入者のクラス代表者が 、クラス・ アクションを承認するための要件である「典型性」及び「適切 性」を満たしていないと判示した。

米国における刑事上の法執行

さらなる自動車部品製造会社及び同社役員に関する有罪答弁 及び起訴

現在進行中の自動車部品に関するカルテルの捜査において、 司法省(DOJ)は、会社及び役員個人の両方に対する新たな 起訴又は有罪答弁を公表した。2014年12月1日現在、32社が、 有罪答弁をしたか又は有罪答弁をすることに合意しており、罰 金として合計2.4十億USドル以上を支払うことに合意した。そ れに加え、48人の個人が、自動車部品産業における価格協定 及び入札談合に関する現在進行中の捜査において起訴され、 そのうち28人が、禁固刑に服することに合意したか又は禁固 刑を科された。

ブレーキホース

日立金属株式会社(以下「日立金属」)は、2014年10月31日、 自動車用ブレーキホースに関する価格協定を共謀したことに ついて、有罪答弁をすること及び1.25百万USドルの罰金を支 払うことに合意した。自動車用ブレーキホースとは、自動車の 油圧ブレーキシステムを通してブレーキ用の液体を運ぶ柔軟 性のあるホースのことである。日立金属及びその他共謀者は、 米国内外でのトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」)及び同 社子会社のいくつかに対する入札及び提案価格について合意 したとのことである。日立金属による共謀への参加は、2005 年11月から少なくとも2009年9月まで続いたとのことである。 日立金属は、自動車用ブレーキホースに関する価格協定につ いて有罪答弁をすることに合意した最初の会社である。

可変バルブタイミング装置

アイシン精機株式会社(以下「アイシン」)は、2014年11月13 日、可変バルブタイミング装置に関する価格協定を共謀した ことについて、有罪答弁をすること及び35.8百万USドルの罰 金を支払うことに合意した。アイシンは、米国内外でGeneral Motors、日産自動車株式会社(以下「日産」)、Volvo及び BMW AGに販売された同装置に関する入札談合及び価格協 定に参加したことについて有罪答弁を行う。アイシンによる共 謀への参加は、2000年9月から少なくとも2010年2月まで続い たとのことである。

ベアリング

ケンタッキー州の連邦大陪審は、2014年11月14日、米国及び 日本でトヨタに販売されたベアリングに関する価格協定を 共謀したことについて、日本の自動車部品製造会社2社から 2人の役員を起訴した。1人の役員は、日本精工株式会社(以 下「NSK」)出身であり、2006年から2011年までNSKの中部日 本自動車部(豊田)営業部長及び営業本部長であった当時、 共謀に参加したと主張されている。もう1人の役員は、株式会 社ジェイテクト(以下「ジェイテクト」)出身であり、早ければ 2001年から2011年7月まで共謀に参加したと主張されている。 同役員は、1999年から2009年までの間、ジェイテクト豊田支 社において部長及び副支社長を歴任したとのことである。起 訴状によれば、上記2人の役員及びその他共謀者は、トヨタに 対する入札及び価格見積もりについて合意をし、部下に対し て競業他社と連絡を取るように指示したとのことである。

以前、NSKは、2013年10月28日、米国内外でトヨタに販売した ベアリングに関する入札談合及び価格協定を共謀したことに ついて、有罪答弁を行い、68.2百万USドルの罰金を科された。 ジェイテクトは、2013年12月3日、米国内外でトヨタに販売し たベアリング及び日産に販売した電動パワーステアリング部 品に関する価格協定を共謀したことについて、有罪答弁を行 い、103.27百万USドルの罰金を支払うことに合意した。

インストロメンタル・クラスターパネル(メーターパネル)

Continental Automotive Electronics LLC及び Continental Automotive Korea Ltd.(以下、両社を合わせて 「Continental」)は、2014年11月24日、米国内外でHyundai Motor Co.、Kia Motors Corp.及びKia Motors Manufacturing Georgiaに販売されたインストロメンタル・クラスターパ ネルに関する入札談合を共謀したことについて有罪答弁 を行うこと及び4百万USドルの罰金を支払うことに合意し た。Continentalは、両社とも韓国を拠点にしている。起訴状 によれば、Continentalは、インストロメンタル・クラスターパ ネルに関する入札談合について共謀したとのことである。司 法省(DOJ)によれば、Continentalによる共謀への関与は、早 ければ2004年3月から、2012年5月まで続いていたとのことで ある。4人のContinentalの役員は、司法取引の対象から除外 され、将来個人的な訴追の対象になり得る。

ラジエーター

司法省(DOJ)は、2014年12月1日、株式会社ティラド(以下「 ティラド」)の日本人の部長が、米国で本田技研工業株式会社 (以下「本田」)及び同社子会社のいくつかに販売されたラジ エーターに関する入札談合及び価格協定を共謀したことにつ いて、有罪答弁を行うことに合意したことを公表した。同役員 は、1年1日の禁固刑を受けることに合意し、20,000USドルの 罰金を支払う。同役員は、早ければ2002年11月から、少なくと も2010年2月まで共謀に参加していたとのことである。

以前、ティラドは、2013年11月12日、米国内外でトヨタ及び本 田に販売されたラジエーター並びにトヨタに販売された自動 変速機油保温器に関する入札談合及び価格協定を共謀した ことについて有罪答弁を行い、13.75百万USドルの罰金を科せ られた。

ワイパーシステム及び始動モーター

司法省(DOJ)は、2014年12月1日、株式会社ミツバ(以下「ミ ツバ」)の元本部長である日本人が、米国内外で本田及び同 社子会社のいくつかに販売されたワイパーシ���テム及び始動 モーターに関する入札談合及び価格協定を共謀したことにつ いて、有罪答弁を行うことに合意したことを公表した。同役員 は、13ヶ月の禁固刑を受けること及び20,000USドルの罰金を 支払うことに合意した。同役員は、2005年6月から2009年12 月まで共謀に参加したとのことである。

以前、ミツバは、2013年11月6日、米国内外で本田、富士重工 業株式会社、日産、トヨタ及びChryslerに販売されたワイパー システム、フロントガラス洗浄システム、始動モーター、パワー ウインド・モーター及びファンモーターに関する価格協定を共 謀したことについて有罪答弁を行い、135百万USドルの罰金を 支払うことに合意した。それに加え、同社は、ある役員が書類 の破棄を命じたという主張に基づく司法妨害についても有罪 答弁を行った。

米国外における出来事

EUは、損害賠償請求訴訟を増加するための決議を採択した

欧州議会及び欧州連合理事会は、2014年11月26日、加盟国及 び欧州連合(以下「EU」)の競争法上の規定違反を原因とす る各国の法律に基づく損害賠償請求訴訟を統制するルール に関する決議を採択した。同決議は、競争法上の執行を求め る訴訟をより利用しやすく、すべてのEU加盟国において標準 化させる複数の手続上及び実体上の要件を提示している。同 決議は、その他多くの詳細な規定を含む、以下のような内容 の規定を作成するように命じている。たとえば、直接購入でも 間接購入でも主張ができなくてはならない。ただし、損害転 嫁の抗弁を規定しなければならない。被害者は、実損害及び 利息を完全に補償されなければならない。ただし、重畳的賠 償及び懲罰的賠償を認める必要はない。一定程度の文書開示 (すなわちディスカバリー制度)を認めなければならない。免 責を得た場合を除き、カルテル参加者は、連帯責任を負わな ければならない。

同決議内容は遡及的には適用されず、EU加盟国は、2016年12 月27日までに、新しい要件に適合する自国法を整備しなけれ ばならない。

スイスフラン建てのデリバティブ商品に関連するカルテルにつ いて、欧州委員会が和解した

欧州委員会は、2014年10月21日、スイスフラン建てのデリバテ ィブ商品に関連するカルテル行為についての2つの捜査で和 解したと公表した。いずれの捜査も、RBS が欧州委員会に課 徴金減免制度(リーニエンシー)の申請を行ったことに端を発 した。そして、RBSは同カルテル行為を明らかにした結果、免 責を得た。

欧州委員会は、RBS、UBS、JP Morgan及びCrédit Suisseとい う4社の国際銀行が、欧州経済地域において、スイスフランの 金利デリバティブ商品の価格スプレッドに関するカルテルを 行っていることを発見した。価格スプレッドとは、所定の製品 について値付け業者が喜んで売る価格と喜んで買う価格の差 額のことである。欧州委員会は、2007年5月から9月の間に、 上記4社が、とある種類の短期店頭取引のスイスフランの金 利デリバティブ商品について、すべての第三者に対してより差 額の大きな価格スプレッドを見積もる一方、4社間の取引につ いてはより差額の小さい価格スプレッドを維持するという合 意をしたことを発見した。欧州委員会は、UBS、JP Morgan及 びCrédit Suisseに対して、合計32百万ユーロ以上(約40百万 USドル)の制裁金を科した。

上記とは別に、欧州委員会は、RBS及びJP Morganが、2008年 3月から2009年7月の間、スイスフランのLIBORに影響を与え ることを意図した違法な2社間のカルテルに参加したことを発 見した。欧州委員会は、上記2銀行が、スイスフランのLIBOR について将来どのような金利を申告するかについて議論し、 取引の持ち高及び意図している金額について情報交換をする ことにより、欧州経済地域におけるスイスフラン建ての金利デ リバティブ商品の通常の値付け過程を歪めようとしていたこ とを発見した。JP Morganは、61.6百万ユーロ以上(約75.8百 万USドル)の制裁金を科された。

以前のカルテル・ウォッチ でご報告したとおり、欧州委員会 は、2013年12月、8社の金融機関に対し、ユーロ建て及び日本 円建ての金利デリバティブ商品を操作することを共謀したと して、合計1.71十億ユーロ(約2.1十億  USドル)の制裁金を科 した。

カルテルの罰金額について-2014年第4半期

米国司法省(DOJ)によれば、2014会計年度(2013年10月1 日から2014年9月30日まで)における反トラスト法の罰金額 は、861百万USドル以上であった。この数字は、2013会計年度 の1.02十億ドルより減少しているものの、2014会計年度の数 字は、反トラスト法とは無関係の犯罪に関連するLIBORの捜 査における400百万USドルを超える罰金を含んでいない。一 方、ヨーロッパの制裁金額は、米国の罰金額を凌駕し続けている。EUは、現時点において2014年に約1.7十億ユーロの制 裁金を科しており、これまでと同じ制裁金の合計金額に近づ いている。日本においては、公正取引委員会が2014会計年度 (2014年4月1日から2015年3月31日まで)に、段ボールシート又 は段ボールケース製造業者に対して約13.3十億円の課徴金を 科したものの、その後は比較的静かである。

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