司法院(※台湾の最高司法機関)は知的財産裁判所に委託して2015年5月4日及び同5日に「104年(西暦2015年)度知的財産関連法に係る座談会」を開催し、最高裁判所の劉福来法廷長(※「庭長」。法廷ごとに「庭長」が1名配置され、事件ごとに替わることはない)の司会のもと、民事訴訟に関連する議題が、知的財産裁判所の李得灶所長の司会のもと、刑事及び行政訴訟に関連する議題が討議された。出席者には、全国の第一審及び第二審裁判所の法廷長、裁判長、裁判官、台湾高等裁判所検察署知的財産分署検察官、弁護士、弁理士、特許代理人、経済部訴願審議委員会、智慧財産局(※台湾の知的財産主務官庁。日本の特許庁に相当)が含まれる。

今回の座談会の目的は、各審級裁判所の知的財産訴訟実務で生じる法律問題について検討し、意思の疎通をはかることにあり、出席者による活発な発言並びに十分な意見交換や議論を経て、7つの議題(民事訴訟に関する議題が4つ、刑事訴訟に関する議題が2つ、行政訴訟に関する議題が1つ)について、以下のように合意に達し、決議した。

民事訴訟

  1. 権利侵害行為者の製造又は販売する多様な商品がいずれも商標権を侵害する商標権権利侵害事件につき、各商品の単価が異なる場合、商標権者が商標法第71条第1項第3号(商品単価の倍数で損害を計算する説)を主張して、権利侵害行為者に損害賠償を請求するとき、裁判所は各商品単価の平均を小売単価計算の基礎としなければならず、そのうえで当該小売単価の倍数を損害賠償の金額とするのが妥当である。
  2. 商標に善意の先使用があるか否かは事実認定問題に属し、法律がその権利義務内容を規範するものではなく、被告が権利侵害により訴訟に巻き込まれ、権利侵害責任を問われた場合にのみ、はじめて免責の抗弁事由とすることができる。しかし、もし営業譲渡による資産・負債の承継であるとき、又はその他の譲渡事情を有するとき、この種の善意による使用の事実は連続し且つ中断されないため、承継者は譲渡者の善意による先使用の事実につき併せて主張し、訴訟のなかで抗弁することができる。
  3. B社が1962年に商標登録された著名商標Aのなかの文字を会社名称の主要部分とすることは商標権侵害を構成する行為であるか否かは、B社の設立登記時の商標法及び現行の商標法を以って当該侵害が今も存在するか否かを判断しなければならず、これによって、これまでの法改正目的にも配慮する。
  4. 使用者が被用者と、被用者が在職期間中、職務上創作したすべての著作物は、いずれも使用者を著作者とし、使用者は法により著作財産権及び著作人格権を享受する旨の取り決めをした場合、使用者はこれにより被用者の職務上の創作の著作人格権を取得することができる。

刑事訴訟

  1. 被告が、ある商標権者の同意又は使用許諾を受けずに、中国(香港、マカオを除く)で、当該商標権者が我が国(台湾)で登録した商標を同一の商品に使用した場合、被告は台湾でいかなる製造、販売行為も行っていないため、商標属地主義原則によれば、被告は当該商標権者が台湾で登録した商標権を侵害していないため、当然、我が国(台湾)の商標法第95条第1項第1号に違反する罪として処することはできない。
  2. 飲食店又はカラオケ店(KTV)の営業場所に設置されたコンピュータ・カラオケ装置内に著作権者の使用許諾を受けていない歌曲が組み込まれ、不特定の消費者が料金を支払ってリクエストし、歌唱するために提供される行為は、「公開演出」の方法で著作物を利用する行為に属し、「貸与」行為では決してなく、著作権法第92条の「無断で」「貸与の方法を用いて他人の著作物の財産的権利を侵害する」罪を構成しない。

行政訴訟

専利権者が裁判所からの判決送達後15日以内に死亡し、裁判所が専利権者の承継人に訴訟を承継するよう命じた後、上訴不変期間を改めて計算しなければならず、これによって訴訟承継者の時効に係る権利を保障する。

知的財産法律座談会における合意は判例ではないものの、知的財産裁判所又はその他各審級裁判所、及び智慧財産局又は経済部訴願審議委員会が具体的な案件を審理する際、通常、当該座談会の合意を引用又は参酌するため、実際に生じる影響は極めて大きい。