英国の欧州連合(EU)残留の是非をめ ぐる国民投票の日取りが決まり、正式に 政策論争の火ぶたが切って落とされた。 私個人の意見は以前にこのコラムで表明 した通りで、今も変わっていない。投 票日が近づくにつれ、人々はEU離脱が 自分自身の生活に及ぼす影響にもっと目 を向けるようになるだろう。そして、議 論の行方も国民のムードも、スコットラ ンド独立をめぐる国民投票の際と同じよ うに推移すると私はみている。最終的に は、EUを離れるのはリスクが大き過ぎ るということが証明されるはずだ。英国 はEUを離脱するよりも、EUを導く手 助けをする方が適している。前向きに考 えれば、メディアでこうした展開を見守 れるのは、極めて興味深いことだ。

最近、私が気になっていてニュースでも よく取り上げられるのは、サイバーテロ と倫理的ハッキングの問題だ。この2つ の言葉は相反するようでいて、同じこと を意味している。要は、データが危険に 晒されているということだ。2013年の 被害額は推定約4,450億ドルだったが、 英調査会社ジュニパー・リサーチによる と、2019年には企業の被害総額が2兆ド ルを超すとみられている。英金融大手H SBCが元行員のハッキングによりスイ スでの脱税ほう助を暴露されたり、健康 データ管理用ウエアラブル端末「フィッ トビット(Fitbit)」のユーザー・アカウ ントがハッキング攻撃を受けたり、はた また不倫サイト「アシュレイ・マディソ ン」の顧客データが倫理感に燃えるハッ カー集団によって公開されるなど、サイ バースペースは戦場と化している。

一方、米連邦捜査局(FBI)はこのほ ど米アップルに対し、カリフォルニア州 サンバーナーディーノで起きた銃乱射事 件の犯人サイード・ファルークが所持し ていた「iPhone(アイフォーン)」のセ キュリティーブロック解除を命じる裁判 所命令を取り付けた。アップルはプライ バシー保護やソフトウエアへの不正アク セス防止を理由に、この命令を覆そうと している。米検索エンジン大手グーグル もアップルへの支持を表明しており、政 府対シリコンバレーの戦いの様相を帯び 始めている。

大手会計事務所プライスウォーターハ ウスクーパース(PwC)の調査による と、民間企業の40%は情報セキュリティ ーへの投資を予定していない。一般に考 えられているのとは逆に、最も危険に晒 されているのは中小企業だ。こうした企 業は資金に乏しかったり、サイバー犯罪 対策に資金を振り向ける意識に欠けてい る場合が多いからだ。例えば、米ロサン ゼルスのある病院は先に「ランサムウエ ア」の被害に遭った。病院のシステムに ハッカーが侵入し、1万7,000ドルの身 代金を支払うまでシステムへのアクセス を阻止したのだ。英国でも、イングラン ド北東部のリンカーンシャー州議会がハ ッキング攻撃を受け、100万ポンドの身 代金を要求された。データは機密性が高 いだけに、まさに「データは金なり」と いえる。これを教訓に、日本企業の多く もサイバーセキュリティーに真剣に取り 組むべきだろう。

気になった1月の取引を以下に挙げる。

  • あおぞら銀行は欧州経済の回復を背景 に、欧州で事業を強化する方針だ。格 付けの低い企業向けも含めて融資を拡 大する。
  • コニカミノルタは買収攻勢を続けてお り、デジタル複合機(MFP)の販売 を手掛けるフランスのDactyl Buroと OMRを買収することで合意した。
  • 日立製作所は新規原発事業に向け英国 に新会社「日立ニュークリア・エナジ ー・ヨーロッパ(HNE)」を設立し た。HNEは、英ウェールズ北西部 の新原発「ウィルファ・ネーウィー (Wylfa Newydd)」建設プロジェク トで、サプライヤーコンソーシアムの 取りまとめ役を果たす。

私生活面では、間もなくマケドニアで開 かれる剣道の欧州選手権大会に向け、英 代表チームのメンバー選考を終えたとこ ろだ。がんばります!

<筆者紹介>

ナイジェル・コリンズ(Nigel Collins)

輝かしい実績を持つロンドンの金融街シ ティーの法律事務所RPCに所属。企業 およびM&A専門の上級弁護士として、 ジャパンデスクの責任者を務める。

This article was originally published by NNA Europe.