タイの新しいクラス・アクション法 タイの民事訴訟法は、不法行為や契約違反、労働権の侵害 を含む民事上の権利侵害に対して、大規模な原告グループ によるクラス・アクションの提起を可能とするために改正され ました。今回の改正は、14 年にもわたってクラス・アクションに 係る改正協議を行ってきた成果であり、このプロセスにはタイ と米国との間における共同作業も含まれていました。したがっ て、タイのクラス・アクション法は、米国のクラス・アクションに 関する民事訴訟法に大きく基づいたものとなっています。

  •  新クラス・アクション法
  • 広範に及ぶ改正協議プロセス
  • タイの民事訴訟における新時代の幕開け
  • 問合せ先 

アクション法

本改正では、民事訴訟法に新たに 49 の規定が組み込まれ、不正行為や法の 下で保護された権利の侵害に対してクラス・アクションを提起することが可能となり ました。これには、環境法、消費者保護法、証券取引法、競争法および労働法に 基づく権利が含まれます。

本改正は、タイの民事訴訟法における大きな発展であり、大規模なグループを 構成して民事訴訟を提起する権利が原告に与えられるのは、タイにおいて初めて のことです。

本改正は、2015 年 4 月 8 日にタイ王国官報で宣言されたもので、2015 年 12 月 4 日から施行されます。

新クラス・アクション法の要綱

  •  本改正では、「クラス」の定義を、当該クラスの各メンバーが同一の「共通事実」に関して同一の権利を有している場合において、被告 に対して互いに類似の特性を有する一人または二人以上の者を含むものとしています。当該クラスの別のメンバーとは異なる種類の 損害を被った場合でも、クラスに該当する可能性はあります。
  • クラス・メンバーは、刊行物および通知手続により、開始されたクラス・アクションについて通知を受けます
  • 通常のところ単一の原告により提起された請求について審理する司法権を有する 地方裁判所を除き、タイの全ての裁判所が、関連するクラス・アクションについて審理 する司法権を有することとなります。例えばクラス・アクション請求が労働者の権利の 侵害に関するものである場合、個々の労働法案件について審理する司法権が与え られている労働裁判所が、管轄裁判所となります。
  • クラス・メンバーの時効期間(出訴期間)は、クラス・アクションが提起された時点で 進行が停止しますが、これはクラス・メンバーの資格を有する可能性のある者に ついて訴権の時効を防ぐためです。
  • クラス・アクションの審理を行う管轄裁判所は、裁判所で証人として証言する有資格 者や専門家を法廷助言人(amicus curiae)として召喚し、尋問する権限を有すること となります。 • 本改正は、米国のクラス・アクション法とは異なり、損害の性質が異なることを理由と する場合にのみクラスのグループ分けを認めており、クラス内で事実上の論点または 法的論点に関する違いがある場合については、これを認めていません。本改正に 付随する説明覚書には、クラスのグループ分けが認められる例が説明のために示さ れています。ここで例として挙げられているのは、工業プラントから河川に放出された 汚染排水により被害を被った原告のクラスです。説明覚書では、農業用水として水を 抽出したことにより被害を被った原告と、汚染された飲料水を摂取したことにより被害 を被った原告とでクラス・メンバーをグループ分けすることについては、認められると 説明しています。
  • クラス・メンバーは、判決金銭債務に関して上訴する権利のみを有し、法または事実 の誤りを理由に控訴裁判所または最高裁判所に上訴する権利は有しません。

広範に及ぶ改正協議プロセス

本改正は長期間にわたる協議プロセスの成果であり、2001 年に、タイの証券取引委員会 (SEC)が自治委員会(Office of the Council of State)に証券訴訟クラス・アクション法案 (draft law on Class Actions for Securities Proceedings)を提出したことにより始まった ものです。同法案は、被害を受けた社債保有者のクラスを代理して SEC が訴訟を提起 することを可能とするために提案されたものですが、これは米国連邦民事訴訟規則の 第 23 条に大きく基づくものでした。

自治委員会は、検討を進めるため、同法案を民事訴訟法改正委員会(CPCR)に付託し ました。CPCR は、広範な協議の末、クラス・アクション訴訟の権利は、社債保有者のみに 限定されず、不法行為や契約違反、その他法の下で保護された公民としての権利の侵害 によりもたらされた多岐にわたる損失について、クラス・アクションを可能とするために拡張 されるべきものであると判断しました。CPCR は、更に協議を進め、広範なクラス・アク ション法の条文を起草するための分科委員会を設置しました。

同分科委員会における協議と起草プロセスは、米国国際開発庁(USAID)の「アジア地域 における景気回復促進」プログラムによる支援を受け、タイの弁護士と米国の弁護士との間における対話ルートが確立され、さらには ケナン・インスティチュート・ アジア(Kenan Institute Asia)やアメリカ法曹協会、タイの米国大使館からも支援を受けました。当然のこと ながら、新たな法案は、米国のクラス・アクションに関する訴訟手続法に大きく基づいたものとなっています。

タイの民事訴訟における新時代の幕開け

企業や事業者は、本改正が 2015 年 12 月に施行された後の潜在的訴訟リスクの増加に備えなければなりません。

特に労働法をめぐる紛争との関連においては、タイは既に従業員に優しい法域であり、本改正は、労働組合や従業員グループに好感を もって受け入れられることが予想されます。雇用者は、新たな改正の施行に際して慎重に対応し、不当な扱いを受けた従業員により クラス・アクションが提起されるリスクを回避するため、労働法に係る実務と手続がタイにおける最低要件を満たしていることを確認する必要 があります。

本改正の英語訳は、今のところ公開されておりません。本改正のタイ語の公式版は、こちらよりご参照いただけます。