連邦巡回区控訴裁判所は、In re Queen’s Universityにおいて、弁護士資格を有さない特許代理人(弁理 士)と依頼人の間のコミュニケーションは、弁護士と依頼人の間のコミュニケーションに認められる 秘匿特権と同様に保護を受ける、と判示した。In re Queen’s Universityにおける争点は、英国のクイー ンズ大学が、証拠開示において、特許代理人との間の秘匿特権を理由に特定の文書の提出を拒否する ことができるか、という点であった。連邦巡回区控訴裁判所は、弁護士資格を有さない特許代理人と 依頼人の間に秘匿特権が認められることを認め、米国特許商標局(USPTO)における出願手続は法実 務といえるため、弁護士資格を有さない特許代理人も連邦法によりUSPTOでそのような法実務に従事 することが認められている以上、USPTOにおける特許代理人の業務に関連する文書を秘匿特権を理由 に提出しないことは許される、と判示した。

連邦巡回区控訴裁判所の判断の実務的な意義は、米国外における、弁護士資格を有さない特許代理人 が、特定の場面において秘匿特権を主張することができる、という点にある。但し、この秘匿特権 が、弁護士と依頼人の間に認められる秘匿特権ほど広範囲に及ぶものではない、という点には注意が 必要である。連邦巡回区控訴裁判所は、特許代理人の秘匿特権の範囲について明確な警告を示し、議 会が認めた行動の範囲におけるコミュニケーションについてのみこの秘匿特権は認められる、と判示 した。すなわち、37 C.F.R. § 11.5(b)(1)では、特許代理人がUSPTOにおいて行うことができる行為を記 載している。よって、特許代理人と依頼人の間の秘匿特権は、それらの行為を遂行するにあたって行 われたコミュニケーション、又は、特許出願及びその準備やUSPTOでの他の手続に合理的に必要かつ 付随するコミュニケーションにのみ、認められるものである。

弁護士資格を有さない特許代理人とのコミュニケーションの目的は、当該コミュニケーションに秘匿 特権が認められるか否かを判断するにあたり、重要な考慮要素となる。例えば、連邦地方裁判所にお ける訴訟、又は、特許の売却や購入を念頭において、弁護士資格を有さない特許代理人が他社特許の 有効性について意見を述べた場合、そのような意見に秘匿特権は認められない。しかし、有効性に関 する意見が、USPTOにおける再審査又は当事者系レビューの中で出されたものである場合には、秘匿 特権を主張し得る。

特許代理人と依頼人の間の秘匿特権の存在、及び、その範囲については、今後の判例においてさらに 検討されていくものである。現時点においては、弁護士資格を有さない特許代理人と依頼人の間のコ ミュニケーションが秘匿特権で保護されるか否かは、USPTOが認める行動の範囲、及び、特定のコ ミュニケーションが行われた理由による、という点に注意が必要である。