アップデイト:連邦最高裁判所の動向

主要な民事訴訟にてクラス承認(class certification)の論点を審理する予定

クラスアクションにおける潜在的に重要な進展として、連邦最高裁判所は、労働法違反 を理由に訴えを提起したTyson Foodsの従業員クラスに関する陪審員の評決を是認した 第8巡回区控訴裁判所の判決を審理することを受理した。第8巡回区控訴裁判所の裁判 体は、2対1の判断で、サンプル抽出した従業員のタイムレコードに基づく陪審員の判断に より十分にクラス全体の責任を評価することができる旨判示した。連邦最高裁判所は、 上告受理の申立て(certiorari)を受理し、(1)従業員の損害がそれぞれ異なる場合に、 原告の主張する損害論がサンプル抽出した従業員の平均に基づく統計的モデルに依拠し ており、かつ、(2)クラスの中の一定のメンバーがいかなる損害も被っていない場合に、 クラスアクションを承認することができるかという論点を審理することになった。連邦最 高裁判所が、上記(1)若しくは(2)のいずれか、又は(1)及び(2)の双方の妥当性を疑 問視して、第8巡回区控訴裁判所の判断を覆すことになれば、その判断は反トラスト法の 訴訟を含むクラスアクションに対する新たな対抗手段を提供するものと思われる。

参照:Bouaphakeo v. Tyson Foods, Inc., 765 F.3d 791 (Eighth Circuit 2014); Bouaphakeo v. Tyson Foods, Inc., 593 F. App’x 578 (Eighth Circuit 2014), cert. granted, 2015 WL 1278593 (U.S. June 8, 2015) (No. 14-1146).

外国取引に対して米国の反トラスト法を適用するかの判断を拒否

連邦最高裁判所は、海外で生ずる行為に関する米国反トラスト法上の刑事責任及び民事 責任を外国取引反トラスト改善法(FTAIA)が限定する程度について判断した以下の2つ の巡回区控訴裁判所の判断を審理することを拒否した。近い将来にこの論点に関する 連邦最高裁判所の判断がなければ、外国取引によって米国反トラスト法上の民事責任及 び刑事責任のリスクに企業がどの程度晒されるのかについては不確実な状況が続くもの と思われる。

  • Motorola Mobility LLC v. AU Optronics et al., No. 14-8003

本件では携帯デバイスに使用されるフラットモニタースクリーンの分野における価 格カルテルが問題となったが、第7巡回区控訴裁判所は、反トラスト法上の損害を被 ったとしてMotorola社が主張している売上は同社の外国子会社が外国にて購入し たものであることに鑑み、FTAIAは同社の請求をほぼ全て阻止するものであると判示 した。同社の外国子会社が米国外にて部品を購入し、最終製品への組立てが米国外 で行われた後に、最終製品は米国内外において販売されていた。第7巡回区控訴裁 判所は、Motorola社の子会社への海外での販売の効果はMotorola社(のちの間接 購入者として)の間接的損害にとどまり、反トラスト法は一 般的に同法違反行為により被った損害が派生的又は間接 的な者には私訴原告の当事者適格を認めていないことか ら、Motorola社に米国反トラスト法上の民事的請求を認め るまでには至っていない旨判示した。第7巡回区控訴裁判 所の判断は、のちに間接的に米国で販売されることになる 製品の外国での販売に基づく反トラスト法上の民事リスク を十分に狭め得るものである。

  • United States v. AU Optronics Corp. America Inc., No. 14-1121

AU Optronics社(以下「AUO」という。)は、FTAIAは米国司 法省(以下「DOJ」という。)がAUOに課した制裁を阻止する ものであると主張して、有罪の陪審員評決及び500百万ド ルの罰金について控訴した。第9巡回区控訴裁判所は、(1 )AUOの米国内顧客に対する販売は「輸入取引」に該当し、 外国取引には該当しないことから、FTAIAは同販売に適 用されない旨判示した。AOUは、第9巡回区控訴裁判所は FTAIAの適用を誤っており、AUOの販売が「輸入取引」に該 当するとの判断は他の裁判所の判断(Motorola Mobility に関する第7巡回区控訴裁判所の上記判断を含む。)とも 一致しない旨主張していた。今回、連邦最高裁判所が上告 受理の申立てを認めなかったことにより、AUOに対する有 罪評決及び500百万ドルの罰金はそのままになる見込み である。

米国の刑事上のエンフォースメント

自動車部品のサプライヤーがパーキングヒーター分野における 談合について有罪の答弁を行った

Eberspacherグループの一員であるEspar社は、2015年6月 25日、有罪の答弁を行い、パーキングヒーター分野における 価格カルテルに参加したとして、ニューヨーク東地区連邦地 方裁判所によって14.9百万ドルの罰金を支払うよう命じられ た。Espar社に対する今回の告発は、長距離トラックなどの商 業用自動車を販売するOEMへの販売に影響する5年に及ぶ行 為(2007年開始)が対象になった。

主要な金融機関5社が外国為替取引市場における共謀で有罪 の答弁を行った

DOJが「歴史的」な成果だと評する2015年5月20日、主 要な金融機関5社が、外国為替取引市場(以下「FX」と いう。)にてEURO/米ドルの組み合わせで談合したこと に始まり、金融市場のベンチマーク金利に影響を与える 謀議に参加したとして、有罪の答弁を行った。JPMorgan Chase、Citicorp、Barclays、RBS及びRBSは、今回の件で合 計250億ドルの罰金を支払うことになる。UBS及びBarclays に課される罰金は、同社らの行為がロンドン銀行間取引金利 (LIBOR)に関連する2012年の不起訴合意の条件に違反した とDOJが認定した結果でもある。

注目すべきは、コンプライアンス文化を向上させるために Barclaysが行った徹底した努力に鑑み、DOJが同社に対する 罰金を減額したことである。これは、DOJの調査が開始して以 来、効果的なコンプライアンス・プログラムの導入によりDOJ が企業に対する罰金を減額した初めての例である。DOJ反トラ スト局のブレント・スナイダー副司法次官補は近時、公共の場 において、Barclays を例に挙げて、DOJの調査に対応した強 固な「コンプライアンス文化」は企業にとってより望ましい結 果になり得ると述べた。

DOJ反トラスト局副司法次官補が複数の管轄をまたがる調査の 国際的協調のより良い姿について提案を行った

刑事エンフォースメントを担当するDOJ反トラスト局のブレン ト・スナイダー副司法次官補は、2015年6月8日、DOJ及び世界 中の主要な司法当局のリーニエンシー・プログラムを同時並行 で舵取りするグローバル企業の影響に言及した。スナイダー 氏は、リーニエンシー・プログラムの適用を求めることの利点 を褒め称える一方で、企業は「ますます複雑かつ混雑した調 査環境」の下で対応しなければならないことを認めた。同氏 は、労力負担を減らす一助となり、リーニエンシー・プログラム やその他の早期協力プログラムを申請するプロセスをスピー ドアップするための幾つかのステップを提案した。同氏は、第 一に、調査の締め切りとタイムテーブルについて司法当局の間 で協調を高めることを提案した。第二に、各司法当局がそれ ぞれの管轄の行為及び影響にフォーカスする必要があること を指摘した。第三に、最も重要な情報にフォーカスするために 調査範囲を狭めるなど、文書要求に対してより「戦略的」なア プローチが推奨されるべきと述べた。第四に、同氏は、複数 の管轄で証人に対してインタビューが行われることの「分断」 と「犠牲」を認め、一人の証人に対して要求されるインタビュ ー数について周到なアプローチを採り、時間や場所について 他の司法当局との間でより良い協調をすることを提案した。最 後に、同氏は、罰金の手法の違いにより複数の管轄間にて罰 金が不統一及び重複することがないように司法当局間のより 良い協調を推奨した。

米国の民事訴訟の動向

原告が自動車部品訴訟において30件目の訴訟を提起する

自動車ディーラー及び自動車購入者を代理する原告が、2015 年5月21日、スパークプラグの製造業者2社に対してクラスアク ションを提起した。自動車部品の複数地区訴訟(以下「MDL」 という。)の他例と同様、原告は、消費者向け自動車を製造す るOEMに自動車部品を供給する際に談合があった旨主張して いる。ますます拡散している自動車部品のMDLは今や30の別 個の訴訟としてミシガン州東地区に係属している。

国際的なカルテルエンフォースメント

欧州司法裁判所がEU競争法を一定の外国販売にまで域外適用 した

欧州司法裁判所は、2015年7月9日、液晶ディスプレイパネル( 以下「LCD」という。)分野のカルテルに参加していたと欧州 委員会が認定した製造業者InnoLux社に対する288百万ユー ロの罰金を是認する判決を下した。InnoLux社は、欧州で販 売することになる最終製品にLCDを組み込んでいる同社工場 へのLCDの内部会社間販売は欧州外で発生しているので、同 社に対する罰金には内部会社間販売を含めるべきではないと 主張していた。

裁判所の上記判決は、いわゆるキャプティブ・セール(企業グ ループ内売上)におそらく限ったものではあろうが、最終的に EUにて販売される最終製品に取り込む部品であれば、キャプ ティブセールとは言えない販売にも欧州委員会が罰金を今後 課すときに利用される潜在的可能性がある。

カルテル罰金トラッカー:2015年第二四半期

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