United States v. Wells Fargo Bank, N.A., No. 12-cv-07527 (S.D.N.Y. Sept. 22, 2015) (ECF No. 295)において、 連邦地方裁判所は、民事訴訟で代理人弁護士によるアドバイスの抗弁を主張することについての、従 業員の適正手続上の利益は、弁護士と依頼人の間の秘匿特権を主張することについての雇用主の権利 を上回るものではない、と判示した。連邦地方裁判所は、従業員であるロフラノ氏は、同氏及び同氏 の雇用主に対して提起された民事詐欺訴訟において、弁護士によるアドバイスの抗弁を自身の積極的 抗弁と主張したが、これによって雇用主であるウェルス・ファーゴ社が保有する弁護士と依頼人の間 の秘匿特権が放棄することはできない、と判示していた。United States v. Wells Fargo Bank, N.A., No. 12- cv-7527 (S.D.N.Y. June 30, 2015) (ECF No. 243)。その際、連邦地方裁判所は、ウェルス・ファーゴ社が 引き続き異議を主張し続ける場合には、ロフラノ氏の抗弁を提示する権利は「ウェルス・ファーゴ社 が秘匿特権を維持する利益を上回る可能性がある」と指摘した。ウェルス・ファーゴ社は異議の主張 を継続し、秘匿特権で保護されるコミュニケーションをロフラノ氏が開示することを禁止する内容の 命令を出すよう裁判所に申し立てた。裁判所は、Swidler & Berlin v. United States, 524 U.S. 399 (1998)に おける連邦最高裁判所の判断に基づき、少なくとも民事訴訟における秘匿特権の主張は比較衡量の基 準で判断されるものではなく、代理人弁護士によるアドバイスの抗弁を主張することについての被告 の適正手続上の権利は、弁護士と依頼人の間の秘匿特権を主張する権利に上回るものではない、と判 示して、当該申立てを認めた。裁判所は、雇用主である会社が、自身の落ち度ではないにもかかわら ず、従業員による抗弁の主張を理由に秘匿特権を放棄しなければならないか否かを決定するにあた り、比較衡量の基準を利用するとすれば、Upjohn判決における「不確かな秘匿特権や、確かなもので あろうとされたものの裁判所が様々な適用を行う結果となった場合は、秘匿特権が全く認められない のより少しましであるに過ぎなくなる」との連邦最高裁判所の警告に違反するものになり、秘匿特権 を不確かなものにする、と説明した。裁判所は、弁護士と依頼人の間の秘匿特権の根底にある政策や 価値を守ることにより、個々の事案において不当な結果が発生することもあり得る、と認めた。