2015 年 4 月 29 日、日豪両国の競争当局であるオーストラリア 競争・消費者委員会(ACCC)と公正取引委員会(JFTC)は、 協力に関する取決め(「本取決め」)を締結しました。本取決めは、 特に国際カルテルの捜査および企業結合規制について、 両競争当局間における連携および協力強化に向けた道を開く ものです。

  •  本取決めについて
  • 競争当局間の協力強化
  • ACCC および JFTC による執行活動の活発化
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本取決めについて

本取決めは、両競争当局間における建設的な協力のための正式な枠組み構築を 目指すもので、自由貿易協定として 2015 年 1 月 15 日に発効した、経済上の連携に 関する日本国とオーストラリアとの間の協定(「日豪 EPA」)を受けて締結されました。 日豪 EPA には、両国が競争の促進に関して協力することを規定する条項が設けられ ていました。

本取決めでは以下のように規定されています。

  • 各競争当局は、他方の競争当局に対し、他方の競争当局の「重要な利益」に 影響を及ぼす可能性があると思われる自己の執行活動について通報するよう努 める。
  • 各競争当局は、他方の競争当局の執行活動を支援するよう努めるとともに、自己 が保有する情報であって、他方の競争当局の執行活動に関連するものを提供 するよう努める。
  • 各競争当局は、審査過程において入手した情報を共有することについて相応の検討をする。
  • 両競争当局が同時に同一の企業結合計画を審査する場合、各競争当局は、秘密情報を他方の競争当局に開示することの許可を 得るため、当事会社の一または複数に連絡を取ることの利益を認識する。
  • 両競争当局が相互に関連する事案に関して執行活動を行う場合には、両競争当局は、それぞれの執行活動の調整について検討 する。
  • 各競争当局は、執行活動に関する紛争を回避するよう努める。
  • 各競争当局は、他方の競争当局の属する国において行われた反競争的行為が 自己の「重要な利益」に著しく悪影響を及ぼすと信ずる場合には、他方の競争当局 に対し、協議を要請することができる。
  • 両競争当局は、協力関係を強化するために、年 1 回意見交換会を開催する。
  • 両競争当局は、本取決めが、リーニエンシー申請者から受領したものを含む情報の 交換に関して、各競争当局が採用または維持するいかなる規則、方針、または実務 にも影響を与えるものではないことを認める。

競争当局間の協力強化

近年、ACCC と JFTC は、双方共に他国の競争当局と同様の協力協定を締結しています。 これは、グローバル化がますます進む経済環境において、競争法上の課題に立ち向かう ために、競争当局間の連携体制を向上させる流れに追随するものです。特に、関連する 証拠が複数の法域に散在することがよくある状況下において、複数の経済圏に影響を 及ぼす国際カルテルや企業結合に焦点が当てられています。

ACCC は、(相互競争当局への準会員の任命を行うなど、非常に近い関係を有する) ニュージーランドに加え、米国、EU、カナダ、中国、台湾、フィジー、インド、パプア ニューギニア、韓国および英国との間で協力協定を結んでいます。また、経済協力開発 機構(OECD)や国際競争ネットワーク(ICN)においても、競争当局間の協力強化を進め る上で、積極的な役割を果たしています。JFTC は、米国、EU、ブラジル、カナダ、韓国、 フィリピンおよびベトナムとの間で、協力協定を締結しています。

ACCC および JFTC による執行活動の活発化

ACCC は近年において、主に大規模な国際カルテルに関連して、いくつかの日本企業を起訴しました。以下は、対象となった企業の一部 です。

  • ボール・ベアリングおよびローラー・ベアリングの供給に係る価格操作に関連して、Koyo Australia Pty LtdおよびNSK Australia Pty Ltd1 (いずれも日本企業のオーストラリア子会社)
  • 陸上ケーブルの供給に係る入札談合や価格操作に関連して、株式会社ビスキャス 2
  • 航空貨物に係る価格操作に関連して、株式会社日本航空インターナショナル(当時)3 4

また、JFTC はこれらの企業のほぼ全てについて、強制措置を実施しました。

最近まで、JFTCが外国企業に対して強制措置を実施するケースは、ほとんどありませんでした。とりわけ、(JFTCにとって外国企業を 対象とする審査においてはこれまで困難であった)証拠収集に関してACCCを含む他の競争当局との協力を強化することで、JFTCに よる執行活動の活発化につながる可能性が高いでしょう。また、本取決めが、証拠の共有を対象とする協定としては日本が初めて締結 したものであることは、注目に値します 5 。これは、豪州企業に対して競争法を執行するJFTCの機能強化につながるでしょう。同様に、 JFTCとの緊密な関係は、国際カルテルや企業結合の審査に対するACCCの活動調整の強化につながることも予想されます。