一.商標審決取消行政事件における具体的な問題

1.新旧商標法第15条の「代理人」の範囲の解釈について

「代理人又は代表者」を拡張解釈するような冒認登録行為を規制する。

2.著名商標の保護について

商標審決取消行政訴訟における著名商標の保護範囲は、『最高人民法院の著名商標の保護に関係する民事紛争事件の審理における法律適用の若干の問題に関する解釈』第9条の規定に基づいて画定されなければならず、特に、既に登録を受けた著名商標の保護は、商品の出所混同を防止することのみに限られず、当該著名商標の「希釈化」の防止にまで拡張されるべきである。既に登録を受けた著名商標の保護範囲が商標審判委員会で混同の基準のみによって画定されたが、訴訟において審理の結果、「希釈化」の基準によって保護を拡張する必要があることが判明したものについては、商標審判委員会の決定は是正されなければならない。

3.類似の商品、類似の商標と混同可能性の関係について

商標法第57条第2号には、商標登録者の許諾を受けることなく、同一種の商品についてその登録商標と類似の商標を使用するか、又は類似の商品についてその登録商標と同一又は類似の商標を使用して、容易に混同を惹起するときは、登録商標専用権を侵害する行為に該当すると規定されている。従って、同一種の商品について同一の商標を使用する行為に混同可能性の要件が求められない以外、その他の類似の商品又は類似の商標についての使用行為が権利侵害を構成するには、いずれも混同可能性の要件を充足しなければならない。商標権の付与・有効の要件に関する第30条等の規定は、第57条第1号及び第2号のように同一種の商品、同一の商標、類似の商品及び類似の商標という場合に区別されていないが、同じ法律中の同様の事項についての規定は、統一的に解釈されるのが法律としてあるべき姿であるので、商標審決取消行政訴訟においては、引用商標が係争商標と類似の商標であるか、又は両商標で使用を指定する商品が類似である場合、容易に混同を惹起するか否かまで考慮して、係争商標の登録可能性が終局的に決定されなければならない。また、類似の商品、類似の商標及び混同可能性という3つの要件は並列して規定されていることから、類似の商品と類似の商標の判断においては、容易の混同を惹起するか否かが類否の判断基準とされなくなり、商品自体又は商標の標章自体からのみ判断がされるようになる。商品自体の属性によって類否を判断するに際しては、『類似商品及び役務区分表』が重要な参考とされて、現に反証があるのでない限り、『類似商品及び役務区分表』の判断をできる限り尊重すべきとされ、個別事件において『類似商品及び役務区分表』の認定を破るのは慎重にしなければならず、十分な根拠があって詳細な検討がされなければならない。当然、商品が必ずしも類似でなくても密接な関連があって、商標の標章の同一又は類似及びその他の要素を考慮すれば混同可能性がある場合には、係争商標は、登録を受けてはならないものである。

4.イメージの商業化による利益の保護について

イメージの商業化による利益の保護対象、保護範囲については、実務上又は学術上における問わず争いが大きいため、その利益を商標法第32条に規定の「先の権利」として保護することは慎重にすべきである。まず、権利法定主義を堅持しなければならない。次に、イメージの商業化による利益の保護範囲については、慎重に検討して、厳格に画定しなければならず、必要でない限り、その利益の保護は、未登録の著名商標の保護を超えるべきでない。各人民法院においてイメージの商業化による利益の保護が必要となるときは、事前に北京市高級人民法院民事裁判第三法廷に報告して審査を求めなければならない。

5.三年間連続して使用を停止されていた登録商標の審査についての原則

(1)使用の証拠の認定にあたっては、証拠優越準則を堅持して、過度に過酷な基準によってはならない。登録商標を使用する指定商品が市場で関係消費者に得られていたことが一定期間継続され、その使用行為が商標法の禁止規定に違反していないことが証拠により示されれば、当該登録商標は、既に真正、公然、適法、有効に使用がされていたものと認定しなければならない。

(2)偽造された証拠については厳しく取り扱う。商標登録者から提供された使用の証拠の一部が偽造されたものであるときは、すべての証拠について厳重に審査して、それに応じて証明基準を引き上げなければならず、証拠を偽造した行為にも処罰を科して同様な行為への警告とすべきである。

(3)登録商標を使用する商品の範囲については、長い間に渡って既に形成された基準を堅持しなければならない。すなわち、指定商品についての使用があれば、登録商標の使用とされるが、使用を指定する商品と類似の商品についての使用は、登録商標の使用とはされず、これに基づいて登録商標の有効を維持することは認められない。

二.商標民事事件における具体的な問題

1.許可を受けていない商標譲渡契約の効力について

商標法第43条には「登録商標の譲渡については、許可された後、公告に付し、譲受人は、公告の日から商標専用権を享有する」と規定されている。この規定によれば、許可を受けていない商標譲渡契約が当事者双方により署名又は押印がされた日に成立して効力を生じても、譲渡人の原因で商標行政主務官庁から許可がなく、公告に付されなければ、譲受人は、当該譲渡契約に基づいて商標専用権を取得することができなくなるが、法に基づき譲渡人の違約責任を追及することができる。

2.並行輸入が商標権侵害を構成するか否かについて

被疑侵害商品が商標権者又はその権限を付与された主体を確かに出所とするものであれば、この場合、商標権者は、既に「最初」の販売から商標の商業的価値を実現していることになるので、他人による「二次的」な販売又は合理的な商業的販売を阻止することはできない。そうでなければ、市場における正常な自由競争秩序が確立される過程を妨げることになるので、「並行輸入」は司法の認めるものであり、商標権侵害を構成すると認められない。

3.商標が実際に使用されていない場合の商標民事事件の裁判に対する影響について

商標民事事件において、権利者の登録商標が実際に使用されていないことは、賠償額を判定する際に考慮される要素となるにとどまり、侵害の認定には影響しない。

4.商標先使用の抗弁の適用要件について

商標法第59条第3項には、先使用の抗弁について規定されているが、この抗弁の成立には次の要件を充足しなければならない。

  1. 先使用者が善意であること。
  2. 先使用者による特定の標章の使用時期が通常は事件関係商標の出願日より先であって、商標登録者による使用より先であり、かつ、商標的な使用がされていること。
  3. 先使用者の使用する商標が「一定の影響」を有すること。知名度の高低の程度については、通常、過酷なものを求めてはならず、先使用者によるその商標の使用が確かに真正な使用であり、かつ、使用によって既に商標にその使用される地域で識別作用を果たさせていれば、「一定の影響」を有するという要件に適合する。