放送法(中国語「廣播電視法」。直訳は「ラジオテレビ法」)、衛星放送法(中国語「衛星廣播電視法」)、有線放送法(中国語「有線廣播電視法」)の一部を改正する法律案が、2015年12月18日に立法院(日本の国会に相当。)を通過し、2016年1月6日付けで総統により公布され、同年1月8日より施行されました。今回の改正は、実務に大きな影響を与えるものであり、かつ、改正箇所も多くなっています。以下では重要な点をご説明いたします。

1.  共通する改正の要点

(1)      放送法及び衛星放送法に共通する改正の要点は、次のとおりです。

A.       スポンサー及びプロダクト・プレイスメントに関する規定の新設

主務官庁である国家コミュニケーション委員会(中国語「國家通訊傳播委員會」。以下、「NCC」という。)は、かつては法律の明文による委任規定がないなかで、市場の要求に応えるべくプロダクト・プレイスメントによる宣伝及びスポンサーに関する規則を制定し規制していました。今回の法改正では、地上波のテレビ又は衛星放送の事業者がスポンサーから支払いを受ける場合、番組放送の前後において、スポンサーの情報を明示しなくてはならない旨明文で規定されました。スポーツの試合又は芸術文化活動を内容とする番組では、視聴者の権利利益に影響を与えないことを条件として、番組中にスポンサーの情報を掲載することもできます(放送法第34-2条、衛星放送法第32条)。さらに、プロダクト・プレイスメントが可能である番組の種類、番組及びその挿入CM放送の明確な識別及び区別、並びにプロダクト・プレイスメントによる広告者及びスポンサーに関する情報の公開の方法、制限及びその他遵守すべき事項等について、関連規則の制定がNCCに委任されました(放送法第34-3条、衛星放送法第33条)。

注意すべき点として、衛星放送法により以下のことが明文の規定で禁止されたことがあります。

  • 衛星放送テレビ事業者が「政府の委託を受けて」プロダクト・プレイスメントの番組を放送すること
  • 政府の委託を受けているのに政府の出資、作製、協賛または補助についての情報を開示しない番組を放送すること
  • ニュース報道及び児童向け番組においてプロダクト・プレイスメントを行うこと

また、プロダクト・プレイスメントを行う場合、故意に番組内容の編集に影響を与えたり、直接に物品、サービスの購買を推奨したり、又は商品の効果を誇大したりしてはならず、さらに番組放送前後に、プロダクト・プレイスメントの広告者の情報を明示する必要があります(衛星放送法第31条)。これらの規制については、もともと放送法の改正案にも同一の規定がありましたが、最終的に通過した放送法改正には当該条文は入りませんでした。この結果、衛星放送法と放送法では、プロダクト・プレイスメントによる宣伝及びスポンサーに関して適用される条文内容が異なるので、注意が必要です。

B.   番組及び広告の定義の更なる明確化

今回の改正では、EU及び米国等の規定が参考にされており、「番組」の定義については、「順序及び時間が配分され規定された、一シリーズの映像、音声及びその関連文字により構成された独立の単元内容」と改正されました。今回の改正において、放送法及び衛星放送法の規定の「番組」は、明確に「リニア」(linear)の内容に限られ、ノンリニア(non-linear)、例えばVOD (video-on-demand)等は含まれないとされました。

(2)      衛星放送法及び有線放送法に共通する改正の要点は、次のとおりです。

A.       ショッピングチャンネルの管理の明文化

今までもNCCはショッピングチャンネルの数量制限を実施していましたが、明文規定はありませんでした。今回の衛星放送法の改正により、直接衛星放送サービス事業者(訳注:直接利用者から利用料を徴収し自らの又は他社の設備を使って衛星放送を提供する事業者)が放送するショッピングチャンネルの数量をチャンネル総数の10%よりも少なくすることが明文で義務づれられました。また、有線放送法において、有線テレビシステムの経営者がシステムにおいて放送するショッピングチャンネルの数量の規制がNCCに委任されました。この他、有線テレビシステムの経営者は、自ら設立したショッピングチャンネルについて他種チャンネル番組供給事業ライセンスを取得することが義務付けられ、また、デジタル化技術により放送される有線放送テレビサービスについては顧客からショッピングチャンネルにつき何らの費用をも徴収してはならない旨規定されました(衛星放送法第24条、有線放送法第38条)。

B.        ショッピングチャンネルの数量制限

同様に注意すべきものとして、与野党協議の際に葉宜津委員らが提案した草案では、次のように説明されていたことがあります。

「本法は有線テレビのデジタル化に合わせた改正であり、将来は基本的なチャンネルのみ積極的に規制し非基本的なチャンネルは原則として規制しないにようになるので、ショッピングチャンネルについては、基本的なチャンネルに分類されない場合、原則としてその数量については制限する必要がないこととなる。同時に、ショッピングチャンネルの放送について、顧客に対し何らの費用も徴収してはならない旨規定している…デジタル化サービスが導入されていない顧客に対する放送に関しては、そのチャンネル数が制限されているため、ショッピングチャンネルの数量を制限する必要がある」

言い換えれば、この草案においては、デジタル化が未完成である場合又はデジタル化後の基本的なチャンネルに区分される場合にのみショッピングチャンネルの数量の制限の必要があるとされていました。この内容の一部は既に現行法第38条第3項に組み込まれました。したがって、NCCは以後、この方向によりショッピングチャンネルの数量の規制計画を進めていくものと予想されます。

2.   放送法の改正の要点

本土の文化、産業の発展のため、もともとある「番組中の本国作成番組は70%を下回ってはならない。」との規定に加えて、「主要な時間帯に放送する本国作成のドラマ番組は同類型の番組の50%を下回ってはならない。…本国作成番組の認定、分類、主要な時間帯の画定及びその他関連の遵守すべき事項に関する規則は、NCCが本法の委任に基づきこれを定めるものとする。」との規定が新設されました(第19条)。

3.   有線放送法の改正の要点

(1)      外資の間接持株比率の計算方法の明文化

旧法においては有線放送システムの経営者に対する外資の間接持株について電信法のような明確な規定はなかったため、その計算方法が常に争われてきました。このため、今回の改正では、電信法の規定を参考に間接持株の計算方式が次のように明文により規定されました。

本国法人のシステム経営者に対する持株比率に、外国人の当該本国法人に対する持株又は出資比率を乗じて、これを計算する。」(第9条)

(2)      運営計画の記載事項の追加

運営計画に記載すべき事項として、以下が追加されました。

  • 本国文化番組放送の実施方法
  • 自ら設置するシステム、第一類電信事業者又はその他システム経営者から賃借する送信設備、及びヘッドエンド予備システムの計画
  • 持株5%以上の株主又は株式引受人の氏名(名称)及び関連情報

現行の有線放送システム経営者は、今回の有線放送法の改正の施行日より一年以内に、NCCに対し計画書変更の申請をし、記載事項を追加することが義務付けられています(第11条)。

注意すべき点として、第12条の規定が新設され、仮に運営計画に記載の取締役、監査役、マネージャー及び持株比率5%以上の株主又は株式引受人の適格性について、NCCが招集した公聴会で、市場の有効な競争の促進、消費者の権利利益の保障及びその他公共の利益に悪影響を与えると認定された場合、NCCはこれを却下しなければならない旨規定されたことがあります。この新設条文により、将来有線放送システムの譲渡又は合併がなされる際の不確定要素がかなり増加することになります。

(3)      外資が投資する際の考量要素の明文化

旧法では、外資が有線テレビシステムに投資する際に考量すべき要素についての規定が具体的ではなかったため、今回の改正で、次の規定が新設されました(第15条)。

  • 外国人の有線放送テレビサービスへの投資の申請については、国家の安全へ影響を及ぼし、又は、産業の健全な発展を妨害し若しくは不利益を与え、又は公平な競争を妨げ若しくは競争を制限するものであってはならない。
  • NCCは審査時に申請者に対し次の事項についての説明及び関連証拠資料の提出を命じなければならない。

一、パブリック・アクセス方法の開放性。

二、チャンネル内容の多様性。

三、消費者の利益の保障及び還元。

四、経営効率の上昇。

五、メディア関連市場への影響。

六、その他主務官庁が公共の利益の目標にとって有益であると認めた事項。

(4)      有線放送のデジタル化の推進を加速させるため、次のとおり、明文で規定されました(第7条及び第20条)。

  • システム経営者が新たに参入し又は経営地区を拡大する場合に、デジタル技術により有線放送サービスを提供しなければならない。
  • そのシステム設置サービスの範囲は、当該経営地区の行政統計上の総世帯数の15%以上に達しなければならず、これを満たす場合のみNCCに対しシステム検査及び営業開��又は営業地区の拡大の申請をすることができる。
  • システム設置のサービス範囲は、一定期間内に当該地区の行政統計上の総世帯数の50%以上に達しなければならず、さもなくば罰則に基づき処罰される。

(5)      システム経営者は、有線放送法の改正の施行日より3ヶ月以内(2016年4月7日まで)に、NCCに対し、有線放送デジタル化の段階的実施計画を提出しなければならず、また、今回の改正後に初めてライセンス更新の申請をする前に、有線放送のデジタル化を完成させなければならず、さもなくば罰則に基づき処罰され又は経営許可証が更新されないとされました。(第48条及び第64条)

4.   衛星放送法の改正の要点

(1)      メディアの自主規制及びアカウンタビリティを強化するため、次のことが要求されるようになりました。(第7条、第8条、第22条及び第28条)

  • 衛星チャンネル番組を経営する供給事業者の申請書類に、内部統制システム及び番組編集査定制度を明記しなくてはならない。
  • ニュースの作成、放送又はその他NCCが指定する衛星チャンネル番組を供給をする事業者は、自主規制システムを構築しなければならず、視聴者からの放送内容の正確性、公平性及び品質に関する苦情を独立して受理しなければならない。
  • 放送するテレビ番組を倫理基準により区分し番組内容により時間帯を分けて放送する原則により、アカウンタビリティを確保しなければならない。

(2)      本土の番組作成を支援するため、次のことが要求されます。

  • 衛星チャンネル番組の供給事業者が番組を作成し放送する際、NCCが定める本国番組比率の制限を満たさなければならず、かつ、番組を企画する際、内容の多様性を考慮し、人格の尊厳を維持し、社会的責任を果たし、また本土文化を保護しなければならない。
  • 今回の改正前から経営者である場合は、衛星放送法の改正の施行日より1年以内(2017年1月7日まで)に、運営計画の変更を申請しなければならない。(第8条)

以上のとおり、今回の放送三法はもとの規定を大幅に改正するものであり、特に有線テレビシステムの経営及びM&Aにおいて、過去に何件かの外資による売買において争いとなった審査要素が明文化されました。将来NCCがこれらの準則を定めた条文をどのように具体的に個別案件に適用していくのか、業界は慎重に観察する必要があります。