先般提示された刑法改正案により、中国にて腐敗撲滅運動 を推進する習近平国家主席にさらなる権限が与えられます。 本改正案が全国人民代表大会にて可決されれば、贈賄側・ 収賄側双方に等しく焦点を当てる方向で推し進められて いる中国の政策シフトが、この新法でさらに証明されることに なるでしょう。

背景

在中国の多くの外国企業にとって、中国特有の商取引上の文化に適応すること は課題のひとつですが、そのなかでも特に例として挙げられるのは、「グワンシ (関係)」と呼ばれる概念です。これは二者間における個人的な関係を意味し、 多くの場合において贈答、接待およびその他の利益供与により確立されるもの です。中国における外国投資家は、国内外における反腐敗当局による取締りが 強化されていることに留意する必要があります。中国でも、政府最上層部の指揮 により反腐敗キャンペーンが推し進められています。

改正案

2014 年 11 月 3 日、中国の立法院は、中華人民共和国刑法第9次改正案 (「本改正案」)を、意見公募のため公表しました。本改正案には複数の改正 項目が盛り込まれており、贈収賄罪や汚職罪の適用範囲拡大と、これらの犯罪 に関連する罰則強化が図られています。以下、いくつかの重要な改正点に ついて解説いたします。

新たな刑事犯罪

本改正案では、ある政府職員に腐敗的影響を与え、かつ、不当な利益を追求することを 目的として、その政府職員の直近親族またはその政府職員と密接な関係を有するその他 の個人に対し賄賂を供与する行為が、新たな刑事犯罪として加えられています。さらに、 不当な利益獲得を目的として、退官した政府職員(またはその退官職員の直近親族もしく はその退官職員と密接な関係を有するその他の者)に賄賂を供与する行為も刑事犯罪と されています。2009 年の刑法改正では、現役および退官した政府職員の直近親族また はそれらと密接な関係を有する者が賄賂を収受した場合に、当該収賄者が同法の適用 対象となる旨が新たに規定されましたが、贈賄者は適用対象とされませんでした。本改正 案は、この拡大された「収賄者」の範疇に属する者に対し賄賂を供与した者も罰則の対象 とすることを目的としています。

贈賄者に対する罰金刑

現行の刑法では、犯罪が特に重大である場合または対象となる賄賂の価額が「巨額」で ある場合を除き、罪を犯した個人に適用される罰則は通常、禁錮刑または刑事拘留処分 です。これに対し本改正案では、すべての類型の贈賄罪に関し罰金が併科されることに なります。罪を犯した個人および(贈賄罪を犯した法人の場合には)社内でかかる犯罪 行為に責任を有する個人がこの刑罰の対象となるでしょう。これらの罰金刑および禁錮刑 に加え、「重大な」贈賄罪を犯した個人については、その財産が没収される可能性もあり ます。

自首による減刑の要件がより厳格に

現行刑法では、贈賄者が自発的に、捜査当局の手が及ぶ前に自己の犯罪行為を認めた 場合、その者に対する刑が減免され得ると定められています。しかしながら本改正案では、 贈賄者が起訴開始前に自首した場合であっても、(犯罪が比較的軽微であったり、 容疑者による当局への情報提供が「重大事件の捜査成功」につながった等)特別の事情 があるときにしか、刑の免除を受けることができません。

関連専門職への従事禁止規定

本改正案ではまた、個人の犯した犯罪がその者の職務上の義務に違反する場合または その者の地位の濫用に該当する場合、追加的罰則として刑事罰以外の罰則が設けられ ています。これに該当する場合、有罪と認定された個人は、刑期満了後 5 年間、専門職 に従事することを禁じられる可能性があります。本改正案において具体的な詳細について の定めはありませんが、この規定は、(金融サービス等)特定のセクターにおける商業上の 贈収賄行為を対象とすることが特に意図されているようです。

新たな量刑基準

本改正案では、収賄(および横領)の罪で有罪と認定された政府職員に対する刑の量定 に関して新たな基準が設けられ、これにより現行の金額基準がより柔軟な量刑基準に 変更されます。この規定に基づき、裁判所は、収賄の罪で有罪とされた政府職員の刑の量定に際し、賄賂の価額その他の要素を斟酌 する権限を有することになります。現行刑法では、対象となった賄賂または横領の金額が、①「5,000 人民元未満」、②「5,000 人民元 以上 50,000 人民元未満」、③「50,000 人民元以上 100,000 人民元未満」、または④「100,000 人民元以上」のうちどれに該当するかに 応じて、刑罰の軽重が 4 段階に分かれています。他方、本改正案の量刑基準はより概括的で、該当する犯罪が、①「比較的大きな」金額 もしくは「比較的重大な」情状、②「巨大な」金額もしくは「重大な」情状、または③「特に巨大な」金額もしくは「特に重大な」情状のうちどれ に当てはまるかが基準となります。この新基準を裁判所がいかに適用すべきかについては、これに関する指針が改正案に盛り込まれて いませんが、今後司法解釈が公表され明確化されるものと期待されています。

ハーバート・スミス・フリーヒルズの企業犯罪・捜査プラクティス

ハーバート・スミス・フリーヒルズは Chambers and Partners による Chambers Global 2014 において、企業捜査部門 (Corporate Investigations – Global-wide)でトップグループ(Band 1)にランクインしており、国際的な法の執行や企業犯罪に関する諸問題について、 この分野の第一線でクライアント本位の助言を提供しております。当事務所は、国際間および国内における犯罪・規制捜査についての 助言提供において豊富な実績を有しておりますが、これらの助言は、贈収賄・腐敗、詐欺、マネーロンダリング、貿易・経済制裁措置違反、カルテル、投資詐欺、脱税、法人故殺、環境規制違反、不適切な会計実務、およびその他の法人・個人の不正行為等の諸問題に関する ものです。

腐敗容疑に関する捜査について助言を行う際には、民事請求の可能性に配慮しつつ、法執行機関・規制機関への対応のサポートを行う とともに、広報、株主とのコミュニケーション、保険、雇用、およびその他の関連事項の管理について助言を提供いたします。

腐敗行為に対する捜査がひとつの法域に限定して実施されることは稀であるため、当事務所の世界的なネットワークが、この分野で特に その重要性を発揮します。クライアントの皆様のニーズにお応えするため、世界各地に所在する当事務所のオフィスでは、アジア太平洋 地域、欧州、および米国での企業調査の実施につき経験を有する専門弁護士が、チームを組んで業務を行っております。

反贈収賄・反腐敗関連分野における当事務所の知見を含め、当事務所の企業犯罪・捜査プラクティスについてのさらなる詳細について は、以下に記載されている東京オフィス在籍の外国法事務弁護士または当事務所の貴社担当者まで、お気軽にご連絡ください。